ESG/SDGs

英国CGコード改訂:大部分が撤回される
-情報開示拡充よりも負担軽減を重視-

西山 賢吾

要約

  1. 改訂作業が行われていた英国コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)であるが、英国FRC(Financial Reporting Council:英国財務報告評議会)は2023年11月7日、その改訂内容の大部分を撤回し、コード内における重複の修正と、内部統制関連について当初案より的を絞った改訂にとどめるとの声明を公表した。
  2. 企業不祥事の発生など昨今の英国の状況を考慮し、英国企業や株式市場の信頼回復を図るために、主に監査やリスクマネジメント、内部統制関連を中心とした改訂が提案されていた。その一方で、英国企業の成長や競争力の強化、英国株式市場の魅力向上が課題となる中、企業の情報開示に伴う負担増に対する懸念の高まりにも配慮し、両者のバランスを取ることを優先して、今回の決定に至ったものと考えられる。
  3. 情報開示の拡充とそれに伴う負担増への懸念との「せめぎあい」は、英国に限らず日本でも見られる。形式的な開示を脱し、実質的で株主や投資家をはじめとしたステークホルダーに資する情報開示の在り方、さらには今後の日本のCGコードの方向性を考える上で、今回の英国FRCの決定がどのような影響、結果をもたらすかが非常に注目される。