1. 米国の住宅金融市場は、近年、二つの理由から注目が高まっている。一つは、米国債市場の縮小に伴うGSE債やMBSの相対的な重要性の高まりであり、一つは、その発行体であるGSEの在り方に関するものである。
2. 米国の住宅金融市場にはオリジネーション市場、セカンダリー市場、MBS市場がある。歴史的には、1930年代よりオリジネーション市場とセカンダリー市場が整備され、1970年代以降にGSEの役割変化の結果としてMBS市場が拡大してきた。
3. 例えば、ファニーメイの過去30年間を振り返れば、単純なモーゲージ貸付の買取り・転売機関からMBS発行の主体へと変貌しており、近年さらにその業務内容を変化させてきた姿を認めることができる。
4. その結果、住宅金融市場にはいくつかの変化がもたらされた。第一に、モーゲージ貸付の保有主体構造における変化であり、第二に、住宅金融市場と資本市場の連動性の高まりであり、第三に、消費者利益へ与えられた少なからぬ影響である。
5. こうした米国住宅金融市場におけるGSEの役割変化は、証券化を起爆剤としてなされてきたわけであり、我が国の住宅金融改革における論議のうえでも示唆に富むものではなかろうか。
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