1. 戦後一貫して増加を示してきたわが国の個人金融資産は、2000年度に初めて前年度比マイナスを記録した。景気低迷の影響で所得が減少する中で、家計は消費を削ることで貯蓄率を維持してきたが、その消費を抑える行動に限界がきていることの現れと言えよう。
2. 高貯蓄率を牽引しているのは高齢者層と言っても過言ではない。従って、高齢者の貯蓄・投資行動が、わが国全体の個人金融資産動向に大きな影響を与えている。これが預貯金偏重に大きく起因している。
3. 高貯蓄率と並んで、わが国の個人の貯蓄・投資行動の特徴となっているのは、金融資産の配分が預貯金偏重になっていることである。これは、どの年齢層にも共通していることに加え、貯蓄額の多い高齢者層においてより顕著な傾向を示していることが、大きな要因となっている。
4. 預貯金偏重は、ここ10年超でその傾向を強めている。それは、通常の預貯金行動以外の資金が流入しているからである。それらは、金利選好の強い滞留資金と言えよう。滞留資金が巨額であるため、一見、預貯金は静態の様相を呈しているように見えるものの、超低金利下でも、家計がインカム・ゲインを追い求める姿勢は強いという動きが生じている。
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