IoT(Internet of Things、もののインターネット)とは、あらゆる「モノ(Things)」を情報通信ネットワークに接続し、サイバー空間と実空間を、人を介さずに直接接合する技術やサービス、概念である。IoTという言葉自体は今世紀に入ってから主に使われており、特にここ数年は世界的なBuzz Word(専門的流行語)となっている。しかし、考え方や流れは偶然や流行ではなく、1980年代以降のICT(情報通信技術)における歴史的必然である。なぜならば、現状のICTの重要課題には、(1)高度に発達したサイバー空間と実空間の間のボトルネック解消、(2)Real-time Computing(即時応答型)からProactive Computing(未来先回り型)への移行、(3)ムーアの法則終焉に伴うコンピュータ単体の性能限界とそれを補う数量的爆発といったことなどがある。IoTとは、こうした重要課題への現状唯一の答えである。今後も、IoT的な技術は、言葉を取換えながら発展し続けるだろう。
一方AI(Artificial Intelligence、人工知能)も歴史は長く、コンピュータの歴史とほぼ同様といっても過言ではない。1950年代にMITのジョン・マッカーシー教授が提唱して以来何度かのブームがあり、現在は第三次AIブームである。現在のAIは、過去のAIと比べると、言葉は共通だが内容は大きく違う。学問的基盤も論理学から統計学へ、実現したい応用も推論から認識へ変わった。過去のAIは人間の論理的思考の機械化を目指したのに対して、現在のAIは感覚の機械化、動物的部分の自動化に競争領域が移行している。