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研究レポート
季刊誌「野村資本市場クォータリー(※)」に掲載の論文の要約、全文及び目次をご覧いただけます。ウェブサイト限定の掲載論文は、全文をご覧いただけます。
(※)2010年夏号より、誌名を「資本市場クォータリー」から改変致しました。
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野村資本市場クォータリー2019年秋号 2019 Vol.23-2 AUTUMN

時流
公的年金の繰下げ受給は長生きリスクを回避するのに効果的か? 要約
時流 公的年金の繰下げ受給は長生きリスクを回避するのに効果的か? 慶應義塾大学理工学部・教授 枇々木 規雄

金融広報中央委員会(2018)「家計の金融行動に関する世論調査」によると、79.2%の世帯が老後の生活を心配しており、長生きリスクは多くの家計にとって向き合わなければならないリスクとなっている。多くの世帯が老後の収入源として公的年金を挙げており、終身年金である公的年金の役割が重要であることが分かる。公的年金の受給前の一定期間は私的年金や自助努力(資産形成)で生活し、なるべく繰下げ受給すれば、長生きリスクは国が責任を持って負担する(生活に必要な受給額は終身で確保される)、という考え方を提示できれば、国民の老後不安を少しでも和らげることが期待できるだろう。この考え方を実現するためには、家計と年金財政の両面から長生きリスクに対する繰下げ受給の効果を定量的に評価する必要がある。この問題意識のもとで修士学生と一緒に研究した論文「公的年金の繰下げ受給と退職後の家計の長生きリスク」の内容を簡単に紹介したい。

「ESG債市場の持続的発展に関する研究会」及びセミナー報告 江夏 あかね
  1. 野村資本市場研究所では、グリーンボンドをはじめとしたESG債の調査の過程で、2018年2月に「ESG債市場の持続的発展に関する研究会」(座長・高崎経済大学 水口剛教授、以下、研究会とする)を開催し、ESG債市場の課題と安定的・持続的な成長のために求められる対応について、産官学連携の議論を行った。
  2. 研究会では、ESG債及びESG債市場の持続的発展に関する論点として、資金調達手段としてのモチベーション、追加性、プライシング、外部評価、インパクトレポーティング、グリーンボンドからソーシャルボンドへの広がり、日本におけるESG課題等が挙げられた。これらの論点については、2019年6月に発刊された『サステナブルファイナンスの時代−ESG/SDGsと債券市場』(水口剛編著、野村資本市場研究所「ESG債市場の持続的発展に関する研究会」著、金融財政事情研究会)に報告されている。
  3. 研究会の問題意識を確認すべく、野村證券が2019年7月4日にブルームバーグと共催で開催したセミナーで、発行体、投資家等の聴衆を対象にESG債に対する考え方等をアンケート調査した。ESG債市場が発展する上でカギとなるESG債の要素に関する質問では、「インパクトの追求」との回答が最も多く、「市場の育成に向けた取り組み」が続くなど、興味深い結果が示された。
  4. ESG債市場は、金融市場と環境・社会課題が結びついた比較的新しい市場だが、グローバルな長期的課題への取り組みの重要性が増していく中、市場として発展し続けることが期待されていると考えられる。多様な参加者による研究や議論、情報発信等、幅広い取り組みが引き続き求められよう。
企業等のサステナビリティ・パフォーマンスに着目したサステナビリティ・リンク・ローンの発展と注目点 江夏 あかね
  1. サステナビリティ・リンク・ローンとは、一般的に、事前に設定・合意された形で、借り手の「サステナビテリィ・パフォーマンス」の向上を促すためのインセンティブが組み込まれた金融商品である。具体的には、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)達成を通じた金利負担軽減といったメリットが設定されるものの、借り手・貸し手ともに、管理に当たって通常のローンと異なる手間・コストが発生し得るといったデメリットもある。サステナビリティ・リンク・ローンは、諸外国で組成額が2017年頃から急速に拡大しており、2019年3月にはサステナビリティ・リンク・ローン原則(SLLP)も公表された。
  2. 世界各国でサステナブルファイナンスに注目が集まる現状に鑑みると、サステナビリティ・リンク・ローンの組成額がさらに増加する可能性もある。ただし、同ローンの多くがタームローンではなく、リボルビング・クレジット・ファシリティ形式であるため、どの程度実際の資金調達が実現するかは現時点では未知数とも考えられる。その意味で、サステナビリティ・リンク・ローンを通じて、どの程度の「追加性」が発現するかは注目されるところである。
  3. 今後について、情報開示やデータ蓄積等を通じて、金融商品としての透明性を向上させることが、サステナビリティ・リンク・ローンの更なる広がりのカギになると考えられる。サステナブルファイナンスにおける新たな金融商品という観点から、サステナビリティ・リンク・ローンの展開が注目される。
ASEAN域内の機関投資家によるESG投資の取り組み
−マレーシアのKWAPとシンガポールのテマセク−
富永 健司
  1. 投資判断を行う際に環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮するESG投資に機関投資家がコミットする動きが広がっている。こうした動きは、欧州諸国などが牽引する形になっているが、昨今、ASEAN(東南アジア諸国連合)域内において、マレーシア、シンガポールといった国の大手機関投資家が、ESG投資への取り組みを強化する動きが出始めている。
  2. マレーシアにおいては、公務員年金の管理運用を行う退職基金公社(KWAP)が、投資プロセスや組織活動でESG要素を考慮する取り組みを進めている。KWAPは、株式投資の際に独自に開発した株式及び発行体に対するESGレーティングを活用している他、債券等に関する信用評価及び投資プロセスにおいてESG要素の考慮を行っている。
  3. シンガポールの政府系ファンドであるテマセク・ホールディングス(テマセク)は、「持続可能な開発目標」(SDGs)の実現を目指すにあたり、活気のある経済、美しい社会、清潔な地球という独自のキーワードに基づきSDGsの目標を分類し、目標達成を志向している。2019年5月、社会貢献に関する傘下の子会社であるテマセク・トラストを通じて、アジアにおけるインパクト投資に特化したプライベートエクイティ(PE)ファンドである、ABCワールド・アジアを組成することを明らかにした。
  4. 本稿で取り上げたKWAPとテマセクの事例が示すように、ASEAN域内にも、異なる特徴を有するESG投資家が登場していることが見て取れる。一般に、ESG投資の定着と普及にあたっては、投資家が、ESG要素が運用資産のリスク・リターンに与える影響を理解・納得すること、投資の社会・環境に対するインパクトを把握することなどが求められてくる。ASEAN諸国においては、経済成長と環境保全の両立が重要性を増す中で、様々な投資家が、どのような形でESGの要素を投資活動に取り入れていくのか、今後の進展が注目されよう。
サイバーリスクと金融規制 淵田 康之
  1. 今日の金融市場においては、金融機関の破綻リスクよりも、サイバーアタックがもたらすリスクに対する懸念の方が高まっている。
  2. グローバル金融危機から10余年を経て、金融機関の自己資本や流動性など、財務面を中心に厳格な健全性を求める規制が整備されてきた。一方、金融サービスにおいてITの活用がより重要となるなかで、サイバーリスクに対する金融機関や金融当局の対応がますます問われるようになっている。
  3. 多くの国では、官民が協力し、サイバーインシデントに関する情報共有・分析、演習の実施などの対応は強化しつつある。米国では、重要なデータが毀損しても、別途、保管したデータにより業務を迅速に再開可能とするシェルタード・ハーバーという仕組みを、銀行界、証券界、資産運用業界が共同で構築した。サイバーセキュリティ保険市場も、米国を中心に成長を遂げている。G7やG20の金融当局者のレベルでも、サイバーセキュリティへの取組みが強化されつつある。
  4. 国際電気通信連合が発表するGlobal Cybersecurity Indexにおいて、わが国は2014年時点では5位にランクされていたが、2018年には14位となった。諸外国におけるサイバーセキュリティ政策が、わが国を上回るスピードで進化していることが、この背景にある。
  5. わが国の金融分野では、サイバーアタックの結果、暗号資産取引所における顧客資産の流出事件やスマホ決済サービスの不正利用事件が、相次いで生じている。資金決済分野のサイバーセキュリティは、システミックリスク防止という観点から、優先度は高い。異業種による決済ビジネス進出も活発化するなかで、現状では、銀行、資金移動業者、前払式支払手段発行者、カード会社、といった業界ごとに縦割りの政策対応が目立つ点など、改善が求められよう。
預金保険制度の可変保険料率に関する論点整理
−望まれる「小さく生んで大きく育てる」制度設計−
小立 敬
  1. 金融庁が公表した令和元事務年度の金融行政方針では、可変保険料率を導入する方針が示された。地銀再編と関連付けられた報道もなされており、世間の注目を集めている。可変保険料率は、米国の連邦預金保険公社(FDIC)が1993年に世界で初めて導入した仕組みであり、その後、世界各国・地域の預金保険制度で導入が進んでいる。
  2. FDICは当初、自己資本比率と監督評定制度(CAMELS)に基づいて決定されるリスク・カテゴリーにより料率を決定する仕組みを導入していた。2007年にはカテゴリーを集約するとともに、金融機関が集中する低リスクのカテゴリーではより精緻にリスクを計測し、料率を決定する仕組みに改定した。さらに、金融危機後には、大規模金融機関のリスクの差異を適切に把握し、預金保険に生じる潜在的な損失の大きさを考慮するため新たな評価方式に変更している。米国では、金融機関のリスク・プロファイルの評価がより適切に行われるよう改定が繰り返されてきた。
  3. 一方、EUでは、金融危機後の2014年に預金保険指令(DGSD)が改正され、域内共通の可変保険料率制度が導入された。各加盟国の預金保険制度(DGS)は、欧州銀行監督当局(EBA)が策定したガイドラインの下、共通のリスク・ベース保険料の仕組みを導入している。
  4. 預金保険制度のあり方については、国際預金保険協会(IADI)が国際基準を定めている。IADIが策定する可変保険料率の導入に関する一般指針は、金融機関のリスク評価や保険料割当てを行う手法を構築することが、可変保険料率を導入する際の最も重要な課題であることを指摘している。
  5. 日本で可変保険料率を導入する際には、金融機関のリスクによって差別化し、それに応じて保険料を割り当てる手法をどのように構築するかが重要になる。欧米ではリスク評価手法が異なっており、自国の金融機関のどのようなリスク特性に注目するかが重要である。また、米国の経験に鑑みれば、日本において導入当初から完全かつ精緻なリスク評価に基づく可変保険料率の仕組みが構築されることは想定しにくい。「小さく生んで大きく育てる」ことが可変保険料率の制度設計において重要な姿勢ではないかと思われる。
チャールズ・シュワブの経営理念と事業戦略 岡田 功太下山 貴史
  1. 近年、チャールズ・シュワブの台頭が目覚ましい。同社の預かり資産総額は約3.7兆ドルに達し、過去10年で約2.5倍となった。また、同社の新規証券口座開設数は2018年に約157万件に達し、過去10年で約2倍に増加している。同社は、グループ傘下に約2,000億ドルの預金を有する銀行も保有しており、これら証券・銀行・資産運用エンティティが連携することで、預かり資産の最大化を目指している。
  2. チャールズ・シュワブは、リテール関連事業を中核とする総合金融機関として、「顧客目線に立った経営戦略」という経営理念を掲げ、同社が定義する「好循環」の創出を徹底している。「好循環」とは、(1)顧客の負担やコストを削減できれば、(2)顧客から新規資産を預かることが可能であり、(3)同社の収益が増大し、(4)同社の株主資本利益率が増加し、(5)新規プロジェクトを運営する支出を増やすことができるという考え方である。
  3. チャールズ・シュワブは、「好循環」を機能させるべく、「米国リテール資産」を獲得することを営業戦略上のターゲットとしている。これは、(1)銀行預金、(2)資産運用及び証券事業、(3)確定拠出年金制度、(4)独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)の販売チャネルにおける資産合計と定義される。同社は、その全体をターゲットと見なしており、その中で取引を望む全ての個人が利用可能な価格設定に努めている。
  4. チャールズ・シュワブは、「米国リテール資産」を獲得すべく、多面的な営業体制を構築している。インベスター・サービス部門には、電話及び対面サービスを提供する担当者や、独立店舗を運営する担当者が所属している。アドバイザー・サービス部門は、IFAと提携し、個人に間接的にサービスを提供している。各営業担当者は、所属部門にかかわらず、新規の預かり資産を増加させることに対しインセンティブが付与されている。
  5. チャールズ・シュワブの各事業は、「米国リテール資産」を獲得し、「好循環」を機能させるべく、あたかも、顧客からの預かり資産を最大化するための「装置」として機能している。同社が、事業を拡大しつつ、今後も「顧客目線に立った経営戦略」を一貫して保持できるのか、チャールズ・シュワブの動向は注目に値する。
新たな金融サービスモデルによる米国リテール市場への参入事例 宮本 佐知子
  1. フィンテック企業は従来米国において、既存金融機関への不満を強く抱き、新たな技術への適応性が高い若年層を中心に急速に顧客を獲得してきたが、最近では若年層に限らずリテール市場全般でも、テクノロジーを活用して参入しシェアを拡大する動きが見られるようになってきた。この市場は、既存金融機関間での競争も激しい一方、顧客側では取引先金融機関を既に決めている人も多いため、新たに参入するにはその点を考慮した展開の仕方が鍵を握る。
  2. 本稿では、新たな金融サービスモデルによる米国のリテール市場への参入事例として、金融危機後に創業しユニコーン企業となったSocial Finance,Inc.(SoFi)と、金融危機により事業構造の改革を迫られた大手金融機関The Goldman Sachs Group,Inc.(GS)を取り上げた。両社は全てオンラインで展開し店舗を持たず、信用力の高いプライム層を狙うなど戦略上の共通点が多い一方で、それぞれ出自や条件も異なるため、リテール市場の中でも特にマス富裕層市場へ新たに参入する企業として興味深い事例になっている。
  3. これらの事例から得られる日本の金融機関への示唆は次の二点が考えられる。第一に、セグメントを絞った顧客中心モデルを一層進めることの重要性である。第二に、他業態を含めた新規参入企業に、既存金融機関が重要顧客を掬い取られるリスクも高まってきたことである。そのため、既存金融機関は今後、重要顧客を守るために先手を打つことで、顧客からの強い支持を得られるよう図っていく必要がある。人口減少時代に入りビジネスモデルの転換を求められている日本の金融機関において、今後は、顧客が真に求める商品・サービスを提供できるよう、発想を転換させ実践することが必要だろう
苦境に立たされる欧州の大手銀行
−欧銀が抱える課題と活路−
磯部 昌吾
  1. 欧州の大手銀行は、グローバル金融危機以降も、欧州ソブリン危機や、金融規制の強化、マイナス金利政策といった収益の低下要因に相次いで見舞われてきた。結果的に、欧州大手銀行の収益力は低下し、米国の大手銀行との体力差が、欧州における米銀との競争にも影響している。
  2. 欧州大手銀行は、経営状態の改善を目指して投資銀行業務の縮小などのリストラ策を進めてきたが、業績は必ずしも好転していない。今後はバーゼルIII最終化の実施によって大きな影響を受けることが見込まれているほか、ブレグジットをめぐる不透明感もある。
  3. こうした中、直近で目を引いたのは、ドイツ銀行が2019年7月に公表した新たなリストラ策である。また、大手銀行の中には、ウェルス・マネジメントやアセット・マネジメント事業への注力や、欧州以外の地域での収益獲得に活路を見出す動きもみられる。
  4. 欧銀の株価は低迷しており、市場の評価は依然として厳しい様子がうかがわれる。その一方で、ファンド、年金、保険といったノンバンク・セクターへの資金流入が拡大しており、ユーロ圏のノンバンクが抱える金融資産は銀行セクターを既に上回っている。欧州の大手銀行がこの難局をどのように乗り越えていき、それが欧州の金融市場の構造にどのような影響を与えていくのか、今後も注目される。
資産運用におけるオルタナティブ・データ活用の可能性と課題 伊藤 健(野村證券金融工学研究センター)佐藤 広大(野村総合研究所)(監修)関 雄太
  1. 米国大手クオンツ・ヘッジファンドを中心に活用が進んできたオルナタティブ・データは、近年、伝統的な資産運用会社やプライベート・エクイティの間でも注目度が高まっている。背景として、大量データの処理技術や人工知能技術等の汎用化、MifidIIなど規制の改革、アルファ戦略の差別化が必要とされる運用環境の3つが挙げられる。
  2. オルタナティブ・データは、伝統的なデータを補完することで運用者の意思決定に資するものであるが、即時性、詳細性、固有性の3点で優れていると考えられる。また、企業業績等の定量情報をより迅速・詳細に測定したり、企業の評判やESGに関する取り組みなど従来は定性的にしか評価できなかった事項を定量的に測定できる可能性を持つと考えられる。
  3. 資産運用会社がオルタナティブ・データを利用しようとする際、多種多様なデータやベンダーを逐一検証し、自らの運用目的に適した有用な情報を取り出すためには多くの時間と資本が必要である。
  4. 利用者層の拡大に伴い、オルタナティブ・データの供給サイドにも大きな変化が起きている。新興ベンダー同士の合併・買収に加え、伝統的な大手情報ブローカーの参入、取引所や格付け機関によるデータ事業の拡充、プライベート・エクイティ・ファームによるデータ部門の取引、セルサイド金融機関による新規データ事業の模索が代表的な動きであり、今後が注目される。
  5. 今後も、他者が目をつけていないデータや独創的な活用方法を探索する競争は続くと考えられる。適切なパートナーとの協業により、オルタナティブ・データを活用することで資産運用会社としての自社の強みを強化・補完していくことが、重要となるのではないだろうか。
2019年公的年金財政検証と私的年金拡充策 野村 亜紀子
  1. 公的年金制度は財政の健全性を確認するため、5年に一度、財政検証が行われる。2019年の財政検証結果が、2019年8月27日に公表された。6つの経済前提を置いた上で、経済成長が実現する3つのケースにおいては、給付抑制策であるマクロ経済スライドの適用を続けても所得代替率50%超が維持され、長期にわたり制度が持続可能であることなどが示された。
  2. 2019年財政検証では、厚生年金の適用対象者を一層拡大した場合と、長く働き続けることによる年金保険料納付期間の延長や受給開始の繰り下げなどの選択肢を拡大した場合について、年金財政への影響を見るオプション試算も行われた。年金財政上プラスの結果が示されており、これに基づき、次の公的年金制度改正の議論が進められることになる。
  3. 財政検証結果の公表を受けて、私的年金改革の気運も高まることが期待される。確定拠出年金(DC)については、現在60歳到達までであるiDeCo加入可能年齢の引き上げなどが、主要な改正事項となっている。また、拠出限度額の引き上げについては、上限設定の考え方そのものの見直しも問題提起されており、議論の展開が注目される。団塊ジュニア世代が40歳代の資産形成期にある今を逃すことなく、本格的な制度の拡充策が求められる。
投資アドバイスの付加価値と対価のあり方を巡る議論 神山 哲也
  1. 近年、日本における対面投資アドバイスでは、フィー・ベースの商品・サービスが拡大してきている。米国においても、顧客と投資アドバイザーの長期的な利害一致を図る目的でフィー・ベースにシフトしてきた経緯がある。もっとも、フィー・ベースの場合、それがどのようなサービス・付加価値への対価なのか、という論点が浮上する。
  2. 米国における投資アドバイスの定性的な付加価値に関する調査・分析によれば、個人投資家は、投資活動の支援は基礎的条件としつつ、それ以上に、対面ならではの安心感の提供や、目的・ゴール達成のための包括的な支援といったものを、投資アドバイスの付加価値として重視しているようである。
  3. また、投資アドバイスの付加価値を定量的にブレイク・ダウンした調査・分析によれば、狼狽売りや高値掴みを防止する行動コーチングや、課税・非課税口座の配分や引出順序のアドバイスなどの税務面での支援が、投資アドバイスの付加価値に占める比率として上位に来ている。他方、アセット・アロケーションなど投資意思決定支援の付加価値は、自動化サービスの登場もあり、必ずしも高くないと捉えられているようである。
  4. 日本においても、長寿化や規制の方向性により、投資アドバイスが長期の顧客利益に繋がることが一層求められるようになっている。そうした中、伝統的な対面投資アドバイスにおけるフィー・ベースへのシフトは不可避であろうし、サービスの付加価値も問われることになろう。その際、米国における議論は一つのベンチマークになるものと考えられる。
加速する中国における証券業と証券市場の対外開放 関 志雄
  1. 2019年7月20日に、国務院金融安定発展委員会が債券業務、資産運用業務、保険業務、マネー・ブローカー業務、証券業務を網羅した11項目からなる金融業開放策を打ち出した。その中には、2021年に予定されていた外資による証券会社などへの出資制限の撤廃を、1年前倒しして2020年に実施するという措置が含まれている。多くの海外の証券会社は、これを中国進出のチャンスとして捉えようとしている。現に、野村ホールディングスとJPモルガン・チェースの香港子会社がそれぞれ外資側51%出資の合弁証券会社の設立準備を進めており、すでに当局の認可を受けている。大和証券グループも自ら51%出資する合弁証券会社の設立を申請している。
  2. 2019年9月10日に国家外為管理局は海外の機関投資家に中国の証券市場への投資を認める適格海外機関投資家(QFII)と人民元適格海外機関投資家(RQFII)の制度について、投資限度額を撤廃すると発表した。その狙いは、海外の投資家による証券投資の拡大を促し、債券市場や株式市場の活性化につなげることである。
  3. 海外の証券会社にとって、対内証券投資にかかわる資本規制の緩和に向けた一歩となるQFIIとRQFIIの投資限度額の撤廃は、合弁証券会社への出資制限の撤廃とともに、ビジネス・チャンスの拡大を意味する。
上海での新興市場(科創板)の創設と今後の展望
−イノベーション型企業の資金調達を支援−
関根 栄一
  1. 2019年7月22日、上海証券取引所に設立された新興市場、いわゆる「科創板」に、イノベーション型企業の第一陣25社が上場した。「科創板」の創設は、2018年11月5日、上海で開催された第1回中国国際輸入博覧会で、習近平国家主席が自ら発表したものである。
  2. 科創板の創設には、(1)上海に初めて新興市場を設立したこと、(2)赤字上場も可能な形で上場要件の緩和を行ったこと、(3)上場の審査・認可制から発行登録制度に移行するための実験をすること、(4)上海の国際金融センター化をイノベーション促進と結びつけて進めること、といった意義がある。
  3. 科創板では、適格投資家制度が採用され、外国人投資家を含む機関投資家と、一定の要件を満たした個人投資家が参加可能である。科創板の上場企業は既に30社を越えており、条件を満たした銘柄の上海総合指数算出銘柄への組み入れ計画や、MSCI指数への採用計画もある。
  4. 科創板で採用している発行登録制度は、実験の進捗次第ではあるが、将来的に、深せん証券取引所の新興市場(創業板)やメインボード自体にも広がっていく可能性がある。科創板の創設は、銀行中心の金融仲介から直接金融を通じた金融仲介の比率を高め、イノベーション型の経済成長を後押ししていくものと期待されている。
シンガポールにおけるプライベート・エクイティ市場の発展に向けた近年の取り組み 北野 陽平
  1. シンガポールでは、プライベート・エクイティ(PE)市場の規模が着々と拡大している。PEの運用資産残高は、2012年末の559億シンガポールドル(本稿執筆時点の為替レートで約4.5兆円)から2018年末には2,130億シンガポールドルへと増加した。スタートアップ企業を含む多くの成長企業が資金を必要とする中、シンガポール金融管理局(MAS)はそうした企業の資金調達の促進を目的として、PE市場の発展を後押しする施策を打ち出している。
  2. また、シンガポールでは近年、未公開の成長企業の株式発行を支援するプラットフォームが登場し始めている。そうしたプラットフォームを運営する国内の代表的な事業者の一つとして、シンガポール取引所の支援を受けているキャップブリッジが挙げられる。キャップブリッジは、未公開株の流通を可能にする未公開株取引所の運営も開始し、富裕層一族等による保有株式の一部売却や未公開株への投資といったニーズに対応している。
  3. さらに、PEファンドを裏付資産とする債券(PE債券)の発行が、シンガポールにおけるPE投資家層の裾野拡大につながっている。2018年6月、テマセク・ホールディングス傘下の運用会社により5.01億米ドル相当のPE債券が発行され、最もリスクが低いトランシェのうちの1.21億シンガポールドルが一般の投資家2.6万人に販売された。2019年6月にも同社により1.8億シンガポールドルのPE債券が一般の個人投資家向けに販売され、同債券は人気を博した。
  4. シンガポールのPE市場の発展を後押しし得るもう一つの動向として、シンガポール可変資本会社(VCC)と呼ばれる新たな形態のファンドの導入が挙げられる。MASは、VCCの導入により国内籍のファンドを増加させることで、PEファンドの運用を含む資産運用業界のさらなる発展を目指している。今後、ASEAN域内におけるPE投資のハブとなっているシンガポールのPE市場の拡大が、中長期的に同域内の資産運用業界の発展や経済成長につながるか注目される。
特集:サステナブルファイナンスへの取り組み
「ESG債市場の持続的発展に関する研究会」及びセミナー報告 要約
江夏 あかね
企業等のサステナビリティ・パフォーマンスに着目したサステナビリティ・リンク・ローンの発展と注目点 要約
江夏 あかね
ASEAN域内の機関投資家によるESG投資の取り組み
−マレーシアのKWAPとシンガポールのテマセク−
要約
富永 健司
金融・証券規制
サイバーリスクと金融規制 要約
淵田 康之
預金保険制度の可変保険料率に関する論点整理
−望まれる「小さく生んで大きく育てる」制度設計−
要約
小立 敬
金融機関経営
チャールズ・シュワブの経営理念と事業戦略 要約
岡田 功太、下山 貴史
新たな金融サービスモデルによる米国リテール市場への参入事例 要約
宮本 佐知子
苦境に立たされる欧州の大手銀行
−欧銀が抱える課題と活路−
要約
磯部 昌吾
金融イノベーション
資産運用におけるオルタナティブ・データ活用の可能性と課題 要約
伊藤 健(野村證券金融工学研究センター)、
佐藤 広大(野村総合研究所)、(監修)関 雄太
アセットマネジメント
2019年公的年金財政検証と私的年金拡充策 要約
野村 亜紀子
個人マーケット
投資アドバイスの付加価値と対価のあり方を巡る議論 要約
神山 哲也
中国・アジア
加速する中国における証券業と証券市場の対外開放 要約
関 志雄
上海での新興市場(科創板)の創設と今後の展望
−イノベーション型企業の資金調達を支援−
要約
関根 栄一
シンガポールにおけるプライベート・エクイティ市場の発展に向けた近年の取り組み 要約
北野 陽平
野村資本市場クォータリー2019年秋号 ウェブサイト版掲載論文

コーポレートファイナンス
我が国上場企業の株式持ち合い状況(2018年度) PDF
西山 賢吾
金融機関経営
英国の金融制度の将来に向けたBOEの優先分野
−テクノロジーの進化による環境変化への対応−
PDF
磯部 昌吾
財政・地方債
地方債に関する日本銀行適格担保の範囲の拡充と今後の注目点 PDF
江夏 あかね
アセットマネジメント
米国のターゲット・デート・ファンドを巡る動向 PDF
岡田 功太
個人マーケット
個人金融資産動向:2019年第2四半期 PDF
宮本 佐知子


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