1. 米国では、97年に入り、銀行による証券会社合併、買収が続いている。バンカーズ・トラスト、アレックス・ブラウン(4月6日)を皮切りに、SBCウォーバーグ、ディロン・リード(5月15日)、バンカメリカ、ロバートソン・スティーブンス(6月9日)、ネーションズバンク、モンゴメリー(6月30日)が発表された。これらの合併、買収は、銀行による証券引受・ディーリング業務制限(いわゆるレベニュー・テスト)が、3月より緩和されたことが引き金となっている。
2. 87年以降、大手米銀は証券引受が段階的に認められるようになり、セクション20子会社を設立して業務拡大に努めてきた。これらの内の数行は、引受ランキングに登場するようになっているが、主に債券引受が中心となっている。株式引受は依然として証券会社の牙城であり、銀行が自力で参入するのは難しいと言われてきた。90年代に入ってから債券・株式引受業務認可を受けたバンカメリカ及びネーションズ・バンクも、当初は自ら証券引受業務を構築しようとしたが、その試みは必ずしも成功していない。そこで、株式引受業務のノウハウを、買収によって一気に獲得しようとしているのである。
3. 一方、新規公開に特化してきた証券会社も、顧客企業の規模が拡大していくにつれ、債券引受やローン等のサービスも提供する必要性を感じるようになっている。しかし、これらの業務は資本力を必要とするため、中小規模の証券会社は、業務拡大が制限されてきた。
4. 銀行・証券会社ともに業界再編の動きが活発化しており、同様の合併、買収は、これからも見られると予想される。その一方で、こうした動きが加熱することによる買収価格の高騰が懸念されている。また、過去の事例を見ても他業態同士の合併が失敗に終わった例も少なくないため、慎重な選択が望まれよう。
|