1.欧州では域内金融資本市場統合の期限とされている2005年末を控えて単一金融資本市場の整備が期待されているが、クロス・ボーダーM&Aの動きはこれまでのところ限定的である。
2.クロス・ボーダーの統合があまり進展していない背景の一つには、各国レベルで国内をベースにした大手金融機関、いわゆるナショナル・チャンピョンを創設、発展させたいという発想がある。伊中央銀行のファツィオ総裁がクロス・ボーダーM&Aの芽を摘んできたのも、ドイツ銀行とドイツ・ポストバンクとが合併する噂が流れたのも、ナショナル・チャンピョンの発想に基づいている。
3.こうした発想が強い国々の特徴としては、(1)市場の寡占化が進んでおらず、ナショナル・チャンピョンと呼ぶに十分値する金融機関が存在しないこと、(2)地元に根付いた相互銀行の数が多いことが挙げられる。
4.一方で米系金融機関の進出が激しい環境下、ヨーロピアン・チャンピョンの出現を待ち望む声もある。クロス・ボーダーM&Aを行う際の様々な障壁を解消しようとする欧州委員会の動きと相俟って、今後欧州レベルでの金融機関再編が動きだす可能性は高まってきた。
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