1. 1年半あまりにわたって表面化してこなかった欧州における取引所再編の動きは、昨年12月スウェーデンのOMグループOMXがコペンハーゲン証券取引所を買収することで合意に至ったのを皮切りに、ロンドン証券取引所に対するドイツ取引所、ユーロネクストの買収交渉がそれぞれ行われるようになるなど、活発化している。
2. ドイツ取引所が提示している非公式の買収提案の中には、ドイツ取引所、ロンドン証券取引所の現物株市場、ドイツのデリバティブ市場(ユーレックス)をロンドンをベースに運営することが盛り込まれている。欧州第一位の現物株市場として抜きん出た存在にある「ロンドン証券取引所」のブランドを維持、最大限活かしたいというドイツ取引所の思惑が働いていることは論を待たない。正式なオファーを提示していないユーロネクストも、オファーを出す際には、同様にロンドン証取のブランドを活かす戦略をとる、と見られている。
3. 現物株市場では圧倒的な強さを維持するロンドン証券取引所ではあるが、派生商品ビジネスが限定的であることに加え、証券決済ビジネスを保有していないことが収益基盤を脆弱にしているという見方もある。そのため、ロンドン証券取引所は折にふれて潜在的な買収ターゲットとなってきた。株主からも、同取引所が今後独立した立場を維持していくことは困難である、という見方も出ている。
4. ロンドン証券取引所を取り込むことに成功した取引所が、欧州における他の中小証券取引所の再編でも主導的な立場に立つ、と見られていることもあり、今後の欧州証券取引所の将来を占う上でも最近の動きが大いに注目されている。
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