野村資本市場クォータリー 2011年冬号
2011年に家計部門で大量の資金移動の可能性
宮本 佐知子
要約
  1. 2010年度下期から今後数年にわたり、家計部門では新たな落ち着き先を求める大量の資金が発生する局面を迎える。「ゆうちょ銀行定額貯金の満期金」と「個人向け国債の満期償還金」が家計の手元に戻るからである。また、「退職金」と「相続資産」というまとまった資金も、今後数年に限らず毎年、家計の手元に新たに入っている。そのため、総額では毎年約70兆円が家計の手元に戻り/入り、新たな落着き先を求めることになる。そこで本稿では、それぞれの資金がどのようなものなのか、どこにあるのかを確認する。
  2. 家計部門の金融資産全体を見ると、ここ10年では新規の資金流入が限られ、実質的に頭打ちとなっている。それだけに、家計の手元に入るこれらの資金獲得は、金融機関の重要課題である。これらの資金獲得を目指す上では、それぞれの資金が担う(資金保有者の)資産選択上の役割に見合った受け皿商品を設計・販売するなど、個々の資金の性質を踏まえたアプローチが有効であろう。
  3. また、これらの資金が60歳代を中心とする前後世代に集中していることから、この世代のニーズに応えることにも注目すべきであろう。例えば、資産設計に関する悩みに応えることで、この世代を満足させられる金融機関は、わが国ではまだ登場していない。「経営の健全性」を確保した上で、リスクやリターンに応じた様々な金融商品・サービスを充実させることや、(コンサルティングも含めて)その提供の仕方を工夫することにより、資金を預ける適切な金融機関として同世代の信頼を勝ち得ることも、資金獲得へ向けた有効なアプローチとなり得るのではないか。

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