時流

特別定額給付金と家計のポートフォリオ

京都大学経済研究所教授 宇南山 卓

要約

コロナ禍の中で実施された特別定額給付金の消費刺激効果は小さかった。その理由は、流動性制約に直面する家計の割合が低いからである。家計は、生涯で利用可能な経済的リソースに合わせて消費をしようとするが、十分な流動性資産を保有していないと流動性制約に直面し、消費は最適水準以下に抑制される。現金給付とは、その流動性制約を緩和することで消費を増加させる政策である。しかし、日本では高齢化・低成長・低金利のため流動性制約に直面する家計は少なく、政策の有効性も低くなっている。今後のためにも、経済成長の実現により家計のポートフォリオを健全化することで、政策の選択肢を広げる必要がある。