中国・アジア

注目を集める中国店頭市場「新三板」の改革

塩島 晋

要約

  1. ベンチャー企業を対象とした中国の店頭株式市場である「新三板」が注目されている。背景として、中国政府がベンチャー企業の育成とイノベーションを奨励していることや、投資家の裾野拡大に向けた制度改正が相次いで行われたことが挙げられる。国内機関投資家だけでなく、国内個人投資家、海外機関投資家も新三板に投資をすることが可能となり、日本の投資家にとっても重要な投資先になり得るものと考えられる。
  2. 新三板は、3階層の市場区分を導入しており、登録企業の時価総額や利益等の財務状況に応じて、上から「精選層」、「創新層」、「基礎層」の順番となっている。2019年末時点で、新三板の登録企業数は8,953社、時価総額は2.9兆元(約45兆円)、資金調達額は年間で264億元(3,960億円)、投資家数は機関投資家が約58,900口座、適格投資家が約387,300口座となっている。
  3. 新三板を巡る主要な制度改正としては、適格外国機関投資家(QFII)及び人民元建て適格外国機関投資家(RQFII)による投資の解禁、公募ファンドによる投資の解禁、新三板に投資可能な個人投資家の範囲拡大などがある。いずれも投資家の裾野を拡げる試みと言える。
  4. 日本でも、私募証券の発行・流通市場の発展が重要な課題となる中、今後の新三板の市場の動向は、日本のプライベートマーケット活性化の参照事例としても、注目に値する。