特別寄稿

見えない価値を可視化する
-第2回 企業にとって重要な指標とは? 環境「E」:「CO2排出量さえ開示すればよいのか」-

野村インベスター・リレーションズ
(野村資本市場研究所 野村サステナビリティ研究センター 客員研究員)
佐原 珠美

要約

  1. 企業が自社の環境に関わる指標を検討する際には、環境の重要課題(マテリアリティ)を検討する。気候変動・脱炭素といった喫緊の課題に加え、水問題、生物多様性、大気汚染、プラスチック等廃棄物問題等多くの課題があるが、自社の社会における存在意義(パーパス)やビジネスモデルに、リスク、収益機会の両面から深く関わる環境課題を検討すると、自社の環境マテリアリティが見えてくる。自社の環境マテリアリティを測る指標が、自社にとっての環境指標である。重要なのは、自社の環境マテリアリティを、環境負荷(リスク)、環境貢献(収益機会)の程度を非財務指標として示すと同時に、環境負荷を低減するためのコストや環境への貢献度を財務指標として可視化することである。
  2. 世界中が脱炭素化の動きにある中、企業も自ら長期環境目標を検討することが求められる。持続可能な開発目標(SDGs)の目標年である2030年や、主要各国が脱炭素を宣言している2050年を目標年として、自社が環境負荷低減に向けて目指す姿を環境ビジョンとして定める。重要業績評価指標(KPI)は、自社の環境マテリアリティを測る環境指標、すなわち環境負荷、環境貢献の程度を測る非財務指標を使う。環境ビジョンを達成するためのロードマップとして、環境負荷低減のための戦略・施策を検討する上で重要なのは、環境負荷低減コストやそれにより見込むリターン、環境負荷低減への貢献度を財務指標として試算することだ。
  3. 自社の環境の重要課題とKPIを検討し、そのKPIを向上するための環境長期ビジョンを策定し取り組むことは容易ではないが、社会と企業自体のサステナビリティを向上させるための戦略目標ととらえ実施すること、そして非財務・財務情報として関連付けながら開示していくことは、投資家・ステークホルダーの理解・賛同を得られ、より良い関係の構築にもつながるはずである。