時流

ウーマノミクスが日本のマクロ経済と財政問題に与えたインパクト

一橋大学経済研究所 所長 祝迫 得夫

要約

90年代末にキャシー松井氏らによって提唱された「ウーマノミクス」は、2010年代中盤以降、アベノミクスの一環として、高齢化時代に突入した日本における労働力人口の減少に歯止めをかけることに貢献した。さらに、ウーマノミクスと高齢者の就労増加は、年金財政の改善に大きく貢献し、貯蓄減少・経常収支の赤字化のトレンドを遅らせることにも寄与している。財政リスクが解消したわけではないが、本格的な財政破綻のタイミングは、かなり先送れたかも知れない。今後のウーマノミクスのいっそうの推進に向けては、女性と高齢者の従業員のパフォーマンス評価に関し、日本企業が伝統的な人事制度を能動的に変革していくことが求められている。