時流

個人投資家の金融リテラシーとサステナブルファイナンス

神戸大学経済経営研究所 教授 家森 信善

要約

サステナブルファイナンスの議論において、機関投資家の役割が強調されてきたが、個人投資家の間でも環境への取り組みが必要との認識が高まりつつある。しかし、日本証券業協会の調査によると、持続可能な開発目標(SDGs)に資するSDGs債の認知は増加しているものの実際にSDGs債への投資はほとんど行われていない。筆者が個票データに基づいて分析したところ、金融リテラシーが高い人はSDGs債や環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の認知は高いが、必ずしも実際に投資しているわけではなかった。海外の研究でも同様の傾向が見られ、環境意識の高い個人の金融リテラシーが低いことが原因だと指摘されている。したがって、金融情報のわかりやすい開示と、金融教育の強化が、サステナブルな社会の構築にとって必要である。