個人マーケット

英国のISA改革案
-投資家の利便性向上と金融事業者の競争促進-

関田 智也

要約

  1. 日本及び英国において、個人投資家向けの税制優遇策の改革が進んでいる。日本では、少額投資非課税制度(NISA)の抜本的な改定が盛り込まれた令和5年度の税制改正法が、2023年3月の参議院本会議で可決・成立した。新たなNISA制度(新NISA)により、家計の金融資産を貯蓄から投資へシフトさせることが企図されている。
  2. 2023年11月22日に英国財務省が公表した秋季財政報告(Autumn Statement)では、個人貯蓄口座(ISA)改革案が示された。主な内容は、同一カテゴリ/同一年度内で複数口座への入金を可能とし、異なる金融事業者へのISAの移転を柔軟化するほか、長期資産ファンド(LTAF)等をISAで投資可能とするものである。本改革案は、制度の柔軟化や投資対象の拡大により、投資家の利便性向上と金融事業者間の競争促進を図る内容であると評価できる。
  3. ISA改革案は、業界関係者から一定の評価を得ている一方で、家計の投資を大きく促進するためには、より本質的な制度改正が必要であると主張する向きもある。金融資産の保有額が少ない個人への投資アドバイスの担い手が不足している、所謂「アドバイス・ギャップ」改善を図る英国金融行為規制機構(FCA)の規則策定を巡る動向も注目されよう。
  4. 税制優遇策の創設や利用で先行する英国のISA改革案が、英国投資家によるISA利用の拡大や、投資家目線での制度の利便性向上にどのように寄与するのか、注目と言えよう。