資本市場クォータリー 2006年秋号
遺産相続と家計資産
宮本 佐知子
要約
  1. 今後の家計資産を考える上では、世代間移転・遺産相続の問題は外せない。先行研究では、わが国の家計資産の3~4割は、遺産によって形成されたと推定されている。


  2. 現在わが国では、貯蓄や純資産の半分以上が高齢者世帯に集中している一方、少子化により遺産を受け取る世代の人数は相対的に少なくなりつつある。そのため今後、一人が受け取る遺産額は大きくなり、親から子、孫へと受け継がれる遺産相続の影響が、ますます強まってゆくと考えられる。近年、所得格差拡大についての議論が盛んに行われているが、世代間の所得移転・遺産相続の大小が生涯所得に与える影響も非常に重要である。


  3. 本稿では、遺産相続を巡る注目点として、第一に、富裕層の相続の実情と資産ポートフォリオ、第二に、遺産に対する意識について重要なポイント(日米の遺産動機の違い、所得階層で異なる遺産行動パターン、平均余命の伸長による遺産相続タイミング後ずれの影響)、第三に、少子高齢化進展の中で遺産の大小が生涯所得の格差を拡大させる可能性について議論する。


  4. また、これらの議論を踏まえた上でのインプリケーションとして、(1)相続タイミング後ずれに伴う相続財産運用市場拡大の可能性や、(2)相続人・被相続人が共に高齢世代となる中で、高齢者のリスクヘッジ手段としての役割に焦点を当てた商品開発の重要性などが指摘できる。

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