金融イノベーション

CBDCへの支持が高まる背景

淵田 康之

要約

  1. 2019年後半より、中央銀行関係者の間でCBDC(Central Bank Digital Currency、中央銀行デジタル通貨)に対して肯定的な発言が目立つようになっている。2020年6月に発表された国際決済銀行(BIS)の年次経済報告書も、今日の民間決済サービスの問題点を指摘し、CBDCを導入することの意義を指摘している。
  2. 現状、キャッシュレス決済サービスは、基本的に民間営利事業となっているが、コストの高さ、使い勝手の悪さ、そして独占・寡占などが問題となっている。様々な対応策も講じられているが、解決には多くの困難を伴っている。
  3. 今、新型コロナ禍も背景に、広範な国民へ迅速・円滑に給付金を支払うことを可能とするインフラや、中小店舗等も含めたキャッシュレス決済導入の必要性が認識されるようになっている。CBDCを導入することで、鉄道や電力におけるように、公益事業型の決済サービスの提供が実現し、今日的ニーズへの対応も可能となる。
  4. わが国は、諸外国と比べ、民間決済サービスが抱える問題への対応が遅れており、例えば中小店舗におけるキャッシュレス決済の広範な普及は著しく困難である。インターチェンジフィーの上限規制など、諸外国が実施してきた各種の対応を、わが国も後追いで導入することも考えられる。しかしCBDC導入は、より有効な解決策となりうる。