中国・アジア

新型コロナ禍期間における中国での非対面型取引生活様式
-遠隔教育、在宅勤務、証券投資向けアプリの利用増-

関根 栄一

要約

  1. 中国では、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年1月下旬以降、人の移動・行動の制限等を伴う公衆衛生上の措置が採られ、感染流行抑制に寄与する一方、同年3~4月までの経済指標は大きく悪化した。第2波への備えも考えると、新型コロナ禍期間(2020年1~3月、または同年1~4月)における人々の行動は、アフターコロナの生活様式の先行指標となっていく可能性がある。
  2. 新型コロナ禍期間の消費動向を見ると、消費全体の伸び率はマイナス成長であったものの、ネット実物販売はプラス成長を維持した。また、インターネット上のアプリの利用者数を見ると、遠隔教育・在宅勤務用アプリの伸びが突出している。非対面型・非接触型取引による民間資本主導のビジネスモデルを支援する地方政府の動きもある。
  3. 新型コロナ禍期間、モバイル決済金額は、大勢の人々が在宅し、外出して消費をする機会が少なかったため、実店舗での取引は減少したものの、これを金融取引の増加が補い、プラス成長を維持した。また、同期間の金融取引では、オンラインツールを使った株式投資も貢献したものと見られる。証券会社や第三者取引プラットフォームの証券売買アプリの月間アクティブユーザー数も、2019年12月から2020年2月にかけて増加しており、ライブ配信を使った投資家教育も試みられている。
  4. 過去の中国経済を見ると、2003年のSARSショックの際には、アリババの電子商取引市場が定着・拡大する契機となり、その後のモバイル決済市場やオンライン型資産運用市場の育成につながった。新型コロナ禍期間に「巣ごもり生活」を経験した人々や企業にとって、非対面型取引生活様式を支えるアプリの役割の重要性は、今後も続いていくこととなろう。