特集1:新型コロナウイルス感染症対応と金融市場

新型コロナウイルスの感染拡大で試練を迎えた中国経済

関 志雄

要約

  1. 中国では、2020年に入ってから、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている。その経済への影響は2003年のSARSの時より遥かに深刻である。経済成長率は、第1四半期には-6.8%と、マイナスに転じ、年末にかけて景気が回復に向かったとしても、年間では、2019年の実績(6.1%)を大きく下回ることが避けられない。
  2. 多くの企業は、業務の停止と再開の遅れを受けて、収入が大幅に減る一方で、賃金、金利、家賃などの固定費用を負担しなければならず、資金繰りが悪化している。その結果、企業の倒産が増え、失業と不良債権の問題が深刻化している。このような事態を回避するために、政府はダメージを受けた企業を対象に、財政面では時限減税、金融面では政策融資の拡大を中心とする支援策を打ち出している。大型景気対策を求める声が高まっているが、その余地は限られていると見られる。
  3. 中国から始まった新型コロナウイルス感染症は、その後、海外へと広がっている。米国、イタリア、スペインなど、それによる死者数が中国を大きく上回る国が続出した。各国は、都市のロックダウンなど、厳しい対策を取る一方で、相次いで史上最大規模の景気対策を打ち出しているが、成長の大幅な落ち込みが避けられないと見られる。海外市場の低迷は、すでに米中貿易摩擦を受けて鮮明になっている中国における輸出の減速に拍車をかけるだろう。このような内外環境の悪化を受けて、中国経済は、大きな試練を迎えている。