金融機関経営

高齢社会の中での地域金融機関
-高齢顧客向けサービスへの示唆-

宮本 佐知子

要約

  1. 日本の高齢化は急速に進展している。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年には高齢世帯数は2,242万世帯、一般世帯総数に占める割合は44%になる。それに伴い、高齢単独世帯数や高齢世帯に占める単独世帯割合も増加していく。
  2. 高齢化の状況を地域別に見ると、このような動きが日本全体よりも早く顕在化する地域も多い。また、高齢世帯はどの地域においても、金融資産を多く保有している。そのため、地域金融機関にとって、高齢顧客への対応は急務になっている。
  3. しかし、高齢顧客の急増は、地域金融機関にとっても初めて直面する課題であり、その対応は試行錯誤が続けられている。そこで本稿では、米英の金融機関による高齢顧客への取り組みについて、顧客の関心が高いと見られ、日本の地域金融機関に参考になりそうなものを紹介したい。
  4. これらの取り組みには、新たな手数料収入を期待できるものもある一方で、直接的には収入につながりづらい「公益的な取り組み」となるものも多い。顧客の信頼を得ることにつながる地域貢献の観点を重視しながら、高齢顧客への取り組みを「収益的な取り組み」につなげることは、営利企業である地域金融機関にとっては重要な課題である。「公益的な取り組み」と「収益的な取り組み」を両立させる金融商品サービスを顧客本位の目線で工夫していくことが、地域金融機関には求められているのではないか。