特集2:中国で台頭する金融プラットフォーマー

中国におけるプラットフォーム業界の独占的行為に対する規制強化
-アリババへの取締りを中心に-

関 志雄

要約

  1. 中国政府は、プラットフォーム業界における企業の独占的行為への規制を強化している。中国において、企業の独占的行為への規制に法的根拠を与えているのは「独占禁止法」である。同法はプラットフォーム企業にも適用されるが、プラットフォーム業界の特徴を踏まえて、2021年2月に、国務院独占禁止委員会により、「プラットフォーム経済分野における独占禁止ガイドライン」が公布・施行された。
  2. 国家市場監督管理総局は、2021年4月10日に、電子商取引の最大のプラットフォーム企業であるアリババが取引先に対し競合他社のプラットフォームで出店などをしないように迫る「二者択一」の独占的行為を行っていたとして、182億2,800万元(約3,000億円)に上る巨額の罰金を含む行政処罰を下した。今後、他のプラットフォーム企業や「二者択一」以外の独占的行為も、取締りの対象になると見られる。
  3. プラットフォーム業界における独占的行為への規制強化は、諸刃の剣である。大型プラットフォーム企業の場合、規模の経済がコストを下げ、資源の配置効率を高める上、独占利潤を獲得するための競争もイノベーションの原動力になる。その一方で、これらの企業による市場における支配的地位の濫用は、競争やイノベーションを抑制してしまう恐れがある。プラットフォームの優位性を発揮しながら独占による弊害を抑えるために、規制の焦点を、プラットフォーム企業の市場における支配的地位ではなく、その濫用という行為に当てるべきであろう。