金融機関経営

香港におけるウェルス・マネジメント業界の発展促進策
-ファミリーオフィスの誘致強化-

北野 陽平、植田 剛将

要約

  1. アジアを代表する国際金融センターの一つである香港は昨今、ウェルス・マネジメント業界の発展促進策として、超富裕層一族を多角的に支援するファミリーオフィスの誘致強化に取り組んでいる。
  2. 香港では、ファミリーオフィスは増加傾向にあるとされる。その背景として、専門性を有する豊富な金融人材、幅広い投資機会へのアクセス、金融市場の安定性、有利な税制、中国本土との近接性、良好なビジネス環境、強固な法制度等が挙げられる。
  3. 証券先物法の下でのファミリーオフィスの認可取得は、その活動内容に基づいて判断される。基本的には、ファミリーオフィスが提供するサービスが証券先物法に基づく規制活動に該当し、当該サービスが事業として香港において提供される場合、認可取得が義務付けられる。
  4. 近年、ファミリーオフィス関連事業を行うプライベートバンクも増加しつつある。当該事業には、ファミリー・ガバナンスの仕組みづくり、ファミリーオフィスの体制、ファミリービジネスに関する助言や、ファミリーのパートナー選定支援等が含まれる。
  5. 今後、香港がアジア太平洋地域におけるファミリーオフィスのハブとしての存在感向上を目指す中、(1)急速な成長を遂げる中国本土とのゲートウェイという強みを最大限に生かせるかどうか、(2)税制を含む諸制度が香港と類似しているシンガポールとの競合、が注目されよう。