中国・アジア

金融・資本市場から見た中国の第14次5ヵ年計画
-直接金融の比率向上に向けて-

関根 栄一

要約

  1. 2021年3月11日、中国の全人代において第14次5ヵ年計画が承認され、2021年から2025年までの中期的経済運営方針と、2035年までの長期的経済運営方針が示された。計画では、国内と国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展モデルの構築を目指す「双循環戦略」を採択するとともに、金融仲介機能の改善のため、直接金融の比率拡大を進める方針を示していることが特徴である。
  2. 直接金融の比率拡大に向け、中国証券監督管理委員会の易会満主席は、計画の2020年10月の建議(提案)段階で、(1)株式発行登録制度の全面的実行、(2)証券取引所の各ボードのあり方の見直しと多様な資本市場の構築、(3)開示制度や上場廃止制度の整備、(4)債券市場の取引プラットフォーム改革、(5)プライベートエクイティファンドの発展、⑥外資も含めた長期資本の市場参入促進、を進めるとしている。
  3. 計画策定の背景にある中国の直接金融の実態を資金循環表(フロー、2019年)から見ると、企業の資金調達のうち借入は7割を超え、家計の資金運用では現預金が6割を超えている。計画には、家計の資産運用に適した金融商品をより多く開発し、企業年金・個人年金の市場育成を進めていく方針も盛り込まれている。
  4. また、国際分散投資面では、段階的ではあるが、QDII(適格国内機関投資家)の運用枠拡大、債券通(ボンドコネクト)のサウスバウンドや年間5万ドルを上限とした個人の対外証券投資制度の創設も進められようとしている。
  5. 計画期間中、金融仲介機能改善が進めば、過去の過剰債務問題の解決の道筋が見えてくるとともに、中国経済のイノベーションがさらに進むことが期待されよう。また、直接金融の比率拡大のためには、「開放を以って改革を促す」政策をベースに、外資系金融機関のグローバルな経験やノウハウがさらに国内市場に導入されることも重要であろう。