ESG/SDGs

主体的・能動的な対応が求められるCGコードの改訂

西山 賢吾

要約

  1. 2021年4月6日にコーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂が公表されたのに伴い、4月7日から5月7日までパブリックコメントの募集が行われている。今後、コメントの内容の検討などが行われた後、6月を目途に改訂が行われる予定である。
  2. 今回の改訂で注目される主なポイントは、取締役の機能発揮(企業が求める取締役会のスキルと各取締役の具備する取締役スキルとの対応関係の公表など)、多様性確保(外国人、女性、中途採用者など管理職の多様性確保に関する測定可能な自主目標の設定など)、サステナビリティ(サステナビリティについて基本的な方針の策定など)、プライム市場への対応である。
  3. 2022年4月4日より運用が始まる東京証券取引所の新市場区分に関し、プライム市場に上場する会社に対しては、他の市場(スタンダード、グロース)に上場する会社よりも高いガバナンス水準を、コーポレートガバナンス・コードでは求める。具体的には、取締役会構成者の3分の1以上の独立社外取締役選任、議決権電子行使プラットフォームの利用と英文開示の促進、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、またはそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実などである。
  4. 今回の改訂では、これまで進められてきたコーポレートガバナンス改革の実効性をさらに高めることや、国際的に関心の高まるサステナビリティへの対応、情報開示の拡充により日本企業、株式市場の存在感をさらに高めることを企図している。その一方、TCFDに基づく開示をはじめ、多くの企業にとって対応に労力と時間がかかると思われる項目も少なくない。このため、コーポレートガバナンス・コードは「コンプライ・オア・エクスプレイン」での対応が求められることの意義を認識しつつ、各社の置かれた状況に応じた、形式的なものに留まらない主体的・能動的な対応が肝要と考える。