アセットマネジメント

サステナブルな社会の実現を目指す米国ドナー・アドバイズド・ファンド

岡田 功太、船津 太佑

要約

  1. 米国のドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)は、寄付を社会課題の解決を図る非営利団体へ効率的に繋ぐ公益法人として注目を集めている。DAFは、(1)寄付者(ドナー)が公益法人(スポンサー)に資産を拠出することで税制優遇を享受し、(2)拠出資産をスポンサーが選定したファンドで資産運用し、(3)ドナーの指示に基づいて運用資産を非営利団体に寄付する仕組みである。
  2. 米国最大のDAFスポンサーであるフィデリティ・チャリタブルは、現金、非上場株式、暗号資産など多様な資産の拠出を受け入れており、18万超の非営利団体に寄付している。フィデリティ・チャリタブルは、ドナーに複数の個別ファンドを提供しているが、ドナーがフィデリティ・インベストメンツ提携先の投資顧問会社から助言を受けることも容認している。
  3. シリコンバレー・コミュニティ財団は、シリコンバレー地域の課題解決を目指すDAFスポンサーであり、教育や医療分野において公益事業を行う非営利団体に寄付している。同財団は、ドナーに対してアイコニック・キャピタル等が運用するファンドを提供している。
  4. 米国におけるDAFは、ドナーによる多様な資産の拠出を受け入れ、その運用を通じて公益増進を目指している。日本の公益法人も、管理運営する基金において、拠出受入資産、投資対象資産、寄付先団体の多様化を図り、サステナブルな社会の実現をより一層後押しすることも検討に値するのではないだろうか。