ESG/SDGs

香港におけるグリーンファイナンスの促進に向けたブロックチェーン技術の活用

北野 陽平

要約

  1. アジアを代表する国際金融センターの1つである香港は近年、グリーンファイナンスの促進に向けて、公的部門主導でブロックチェーン技術の活用を強化している。背景には、香港が同地域におけるグリーンファイナンス及びデジタル資産(トークン)のハブになる目標を掲げていることがある。
  2. 香港金融管理局(HKMA)と国際決済銀行(BIS)イノベーション・ハブは2021年、個人向けグリーンボンドをブロックチェーン上でデジタル資産に変換するトークン化の概念実証を実施した。その結果、個人投資家によるグリーンボンドへの投資の利便性及びグリーンボンドの調達資金の利用に関する透明性を向上させることが可能であることが確認された。
  3. 両組織は2022年、国際連合気候変動グローバル・イノベーション・ハブと連携し、グリーンボンドの緩和成果利益(MOI)に焦点を当てた実現可能性調査を行った。MOIとしてカーボンクレジットが用いられ、ブロックチェーンやスマートコントラクト等のテクノロジー活用により、グリーンウォッシングのリスク低減等につながり得ることが示された。
  4. 香港政府は2023年2月、政府として世界初となるトークン化グリーンボンドを試験的に発行した。発行額は8億香港ドル(2023年11月15日時点の換算レートで約155億円)であり、機関投資家向けに販売された。同債券は、パーミッション型ブロックチェーン・プラットフォーム上で発行され、値決めから1営業日で決済が完了した。
  5. 今後、香港において、(1)環境改善効果をリアルタイムで把握できる仕組みの実用化、(2)香港政府による個人向けトークン化グリーンボンドの発行、(3)グリーンボンドのMOIとして用いられるカーボンクレジットに対するテクノロジー活用のさらなる検討、の進展が注目される。