金融イノベーション

オープンイノベーションの促進の重要性と税制対応

板津 直孝

要約

  1. 近年、オープンイノベーションを促進する取組が、広がりを見せ始めている。これまでの自社の資源依存度が高い垂直統合型のクローズドイノベーションの限界が認識され始め、社内外から人材・技術・資本の流出入を活用した、外部組織との連携型のオープンイノベーションの促進が重要となってきている。
  2. 日本では、産学連携によるオープンイノベーションは進んでいるが、既存企業とベンチャー企業との協働については、欧米と比較して弱く課題があるとも指摘されている。既存企業とベンチャー企業との協働を後押しする必要があると考えられるが、法人課税の分野では、2020年度税制改正において、オープンイノベーション促進税制が創設された。
  3. 同税制は、既存企業が国内外のベンチャー企業の株式を出資の払込みにより取得した場合には、その株式の取得価額の25%相当額の所得控除を認める税制優遇措置を講じている。所得控除の上限金額は、出資額に換算すると、出資1件につき100億円、一事業年度当たり500億円であり、2020年4月1日から2022年3月31日までの間に適用されることから、対象企業にとって、ベンチャー企業への出資としては、国内外の幅広い様々なオープンイノベーションへの取組を可能にする適用範囲になっていると言える。
  4. 日本は先進国の中でも、生産年齢人口減少による人材供給面での構造的な課題を抱えている。オープンイノベーション促進税制は、国内外の資源の連携により人材の質を高める上でも日本企業を後押しする政策のひとつとして、今後の動向が注目される。