特集1:コロナ禍で変容するリテール証券ビジネス

コロナ禍において活況を呈する欧州リテール証券ビジネス

磯部 昌吾

要約

  1. コロナ禍によって欧州の多くの主要都市がロックダウン(都市封鎖)に陥った2020年3月、移動を制限された個人投資家が、平時とは異なる投資行動を見せた。
  2. ウェルス・マネジメント事業(WM事業)の欧州最大手UBSでは、2020年第1四半期に堅調な業績を上げた。ロックダウンによって多くの従業員が在宅勤務となったが、顧客とのやり取りはむしろ増加したとされることから、UBSが非対面営業を行える体制を構築していたと同時に、実際に非対面ツールに移行しても揺るがない富裕層顧客との信頼関係を従来から築くことができていた姿が窺える。
  3. また、3月は、富裕層投資家だけでなく、投資額が少ない若年層や投資経験が少ない個人投資家も、英国やフランスなどにおいて口座開設や売買を活発化させる動きを見せた。
  4. 金融市場が急変しリスクが高い局面であったが、個人投資家の動きが活発化したことは、それだけの投資ニーズが3月に発生していたことを示している。現在は、平時とは異なるリスク選好を示した個人投資家に対して金融機関がまずは上手く応えたというところであるが、今後はこうした個人投資家とどのように長期的に関係を持続していけるのかが金融機関に問われることとなろう。