アセットマネジメント

職域退職プラン未提供企業の従業員向け普及促進策
-米国州政府スポンサー制度の進展-

岡田 功太、中村 美江奈

要約

  1. 岸田政権の「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023)には、確定拠出年金の利用促進に向けた、必要な支援の検討を行う旨の記述が盛り込まれた。
  2. 米国においては、州政府スポンサー退職プラン制度を通じて、401(k)プランや個人退職勘定(IRA)などの退職プランの普及を促進している。同制度は、退職プランを提供していない企業の従業員に、州政府が退職プランを提供する仕組みである。
  3. 州政府スポンサー退職プラン制度の中でも、カリフォルニア州のカルセーバーズが最大の加入者数及び運用資産総額を誇っている。カルセーバーズは、退職プランを提供していない事業主に対し、従業員のカルセーバーズへの自動加入を義務付ける。その際、事業主拠出を不可とすること等で、事業主負担の軽減を図っている。従業員は非加入(オプトアウト)を選択することも可能だが、結果的にIRAへの加入を促すことで退職資産形成を推進している。
  4. 日本においても、退職プランの普及に向けて、これまで様々な施策が講じられてきた。今後、確定拠出年金の飛躍的な拡大を実現するには、企業やサービス提供者の自主的な工夫、取り組みを引き続き追求するのと同時に、確定拠出年金の自動化制度のような手法を検討し始める時期が来ているのではないだろうか。