ESG/SDGs

2022年6月株主総会議決権行使結果と今後の注目点
-不祥事とサステナビリティへの高い関心-

西山 賢吾

要約

  1. 2022年6月に開催された株主総会では、全体的には大きな波乱は見られなかったものの、不祥事が発生した企業や、取締役の構成(社外取締役の数や女性取締役の設置)が投資家の要請する基準を満たさない企業の会長や社長など経営トップの取締役選任議案で、賛成率が50%台や60%台に留まる事例が2021年に比べ増加した。
  2. 近年注目されている環境関連の株主提案については、その多くで賛成率が20%程度に達しており、概ね一定の賛同が集まったと考えられる。その一方で、ウクライナ情勢やエネルギー価格の高騰などを受け、さらに一段水準の高い環境への対応を求める環境関連団体等の株主提案側と、企業価値や投資収益への影響する機関投資家との間で意見の相違も見られ、賛成率は伸び悩んだように見受けられる。
  3. 個人投資家の議決権行使においては、議決権行使への関心の高まりと、保有先企業へのロイヤルティの高さという近年見られる傾向には大きな変化はなかった。
  4. 今後の議決権行使を巡る注目点としては、(1)取締役の構成(社外取締役の増員、女性取締役の設置)、(2)政策保有株式に対する数値基準導入拡大の動き、(3)投資家を中心とした、環境などサステナビリティ関連の開示や説明の拡充への要請、(4)「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」を受けた企業の保有する現預金の使途(キャッシュのアロケーション)に対する投資家の関心の高まり、などを挙げることができるであろう。