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米国の家計が教育資金を「貯める・増やす」ことを支援する税制優遇制度529プラン

岡田 功太、橋口 達、船津 太祐

要約

  1. 日本では、高等教育費の負担や奨学金の返済などが少子化の一因として指摘されている。教育資金の確保を支援する制度として、教育資金に係る贈与税非課税措置が存在するが、同制度では長期分散投資をすることで資産を増加させることはできない。また、同制度は2026年に失効する予定である。
  2. 米国では、教育資金向けの税制優遇制度である529プランの利用が拡大している。全米最大の資産残高を誇るバージニア州の529プランはキャピタル・グループと連携し、それに次ぐニューヨーク州の529プランは主にバンガードと連携して運営されている。これら資産運用会社は、529プラン加入者向けのファンドの開発を進めている。
  3. 529プランに係る制度は、教育資金支援を主眼としつつも利便性向上の観点から度々見直されており、2024年以降は同プランの資産を一定額まで退職資産形成制度に移管することが可能となる。つまり、529プランは、個人を生涯にわたり支える資産形成制度の一部として位置づけられたといえる。
  4. 目下、岸田政権は、資産運用立国の実現を目指している。日本においても、教育資金を「貯める・増やす」ことを支援する税制優遇制度である「日本版529プラン」の創設を検討しても良いのではないだろうか。また、少額投資非課税制度(NISA)の利用方法の一つとして、教育資金の確保を目的とした資産形成を行うことも検討に値しよう。