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時流

日本企業のリーダーシップ開発の現状と市場との対話-幹部育成担当者への調査から-

早稲田大学ビジネススクール 教授 池上 重輔

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要約
 

本稿は、国内大手企業の幹部育成担当者・責任者への調査結果を通じて、日本企業のリーダーシップ開発における現状と課題を明らかにしている。共通の問題意識として、まずOJTだけでは不十分であり、外部の知見や他流試合を取り入れる必要性があること、デジタルトランスフォーメーションに対するスキル要件が曖昧なままであること等が指摘されていた。また、新事業創造や改革・変革経験の重要性も確認された。さらに、全社経営を主導する人材の養成やリベラル・アーツの重要性も語られていた。トップリーダー自身へのインタビュー調査から、トップがこれからのトップリーダーに求める能力としてはマルチステークホルダーのマネジメント力が重視され、市場との対話能力も求められていることが明らかになった。

特集1:金融システムへの不安再燃

米国SVBの破綻要因の分析と預金保険制度改革の検討-米国当局による反省と今後の課題に学ぶ-

小立 敬、橋口 達

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要約
 

  1. シリコンバレー・バンク(SVB)の破綻に始まる2023年3月の米国の銀行システムの混乱を受けて、連邦準備制度理事会(FRB)及び連邦預金保険公社(FDIC)は、4月末から5月初にかけて報告書を相次いで公表した。
     
  2. FRBは、報告書においてSVBの経営の失敗が破綻に直結したとする一方、SVBの脆弱性の程度を十分に認識できず、SVBに速やかに問題の是正を促すような監督措置を講じなかったという監督の失敗を挙げる。その上で今後の課題として、①リスク特定の強化、②レジリエンスの促進、③監督当局の行動変化、④プロセスの強化を掲げた。
     
  3. FDICは、テクノロジーの変化によって預金引き出しのリスクが高まっているという問題意識に基づいて預金保険制度改革を検討する報告書を公表した。①限定的な預金保護、②全預金保護、③決済預金保護という三つの選択肢を提示し、銀行のリスクテイクや資金調達、広範な金融商品市場への影響を踏まえながら、金融安定性を向上させる最も望ましい選択肢として決済預金保護を挙げる。
     
  4. SVBの破綻の教訓として、ソーシャルメディアと金融テクノロジーがもたらすデジタル・バンクランは、銀行の存続可能性に重大な影響を及ぼすことを学んだ。日本でもデジタル・バンクランが発生することを想定しつつ、金融機関は最低限、緊急時の資金調達に関する手段と能力を再検証することが求められよう。米国当局の議論は緒に就いたばかりであり、さらに議論を深めていく必要があるように思われる。

クレディスイス救済買収の示唆-金融規制・監督及びビジネスの観点から-

関田 智也

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要約
 

  1. 2023年3月19日、UBSはクレディスイスの買収を発表した。本事案は、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)の一角を占めていた大手銀行が買収されるに至った初のケースとなった。本稿では、金融市場の反応や各国の金融規制当局による対応・問題提起が一巡したと見られる中、本件買収を包括的にレビューし、示唆の抽出を図る。
     
  2. クレディスイスは、長期的には各種スキャンダルによる市場・顧客の信認低下、短期的には大口投資家の動き、米シリコンバレー銀行破綻の煽りを受けたことなどにより、救済買収に追い込まれた。
     
  3. 市場参加者から最も注目を集めたのは、クレディスイスが発行していたその他Tier1(AT1)債を無価値化するというスイス金融規制当局の決定であった。この決定が物議を醸したのは、ベイルインが行われる際の弁済順位を巡る国際合意から逸脱していたためである。
     
  4. 各国の金融規制当局は、銀行規制・監督の見直しに着手しており、大手銀行の流動性を巡る規制・監督が議論の中心となっている。一方、UBSの巨大化を巡る国内世論の懸念などを契機に、「大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)」を巡る規制枠組みの再考を促す向きもある。
     
  5. 今後は、AT1債市場の動向、グローバル金融危機後の金融規制強化の見直しの動き、クレディスイス買収をビジネスの成長に繋げることを目指すUBSの経営戦略、の三点が主な注目点となろう。

特集2:中国規制改革の展開

中国共産党第20回党大会後の金融管理監督体制改革-党中央による金融分野への指導を強化-

関根 栄一

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要約
 

  1. 2023年3月、国務院(内閣)と中国共産党中央委員会(党中央)は、2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)で発足した習近平指導部第3期目の目玉となる党・国家機構改革案を公表した。党の機構改革案のうち、金融分野では、党中央に新たに中央金融委員会、中央金融工作委員会が設立され、党中央による金融業務に対する統一・集中した指導を強化することとなった。また、中央金融工作委員会は、2021年9月から始まった中央規律検査委員会による金融当局・金融機関への検査結果を踏まえ、さらに綱紀粛正や腐敗取り締まりを担うことになる。
     
  2. 同様に国家機構改革案では、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)を廃止し、新たに国家金融監督管理総局を設立して、証券業を除く金融業の管理監督を一元的に行うとした。また、中国証券監督管理委員会(証監会)を国務院事業単位から国務院直属機関に変更した。
     
  3. 証監会については、国家発展改革委員会の企業債発行審査の職責が移管され、社債の発行審査業務を一元的に担当することになった。また、証監会は、国家金融管理監督総局と同様、国務院直属機関として、定員・給与面でも国家公務員と同様の管理が行われることとなった。
     
  4. 中国人民銀行(中央銀行)については、1998年に形成された本店-広域9支店-本店直属営業管理部・省都中心支店-市レベル支店-県レベル支店の5階層から、本店-31の省レベル支店-市レベル支店(県レベル支店を廃止・移管)の3階層の体制に25年ぶりに再編・簡素化され、民間企業及び小規模・零細企業の資金調達難に対応するきめ細かい金融政策が党中央から同行に求められることとなった。他に、地方の金融管理監督体制改革や、国有金融機関に対する国の出資者管理体制の整備も進められることになった。
     
  5. 国家金融監督管理総局は2023年5月に発足し、党書記を兼務する総局長の金融改革や対外開放に対する指針が出始めた中で、今後は、党中央に新設される二つの委員会のトップ人事や機関設計に注目が集まるだろう。

2022年に急増した人民元建て貿易決済金額-人民元国際化の進展状況-

関根 栄一

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要約
 

  1. 2023年2月24日、中国人民銀行は、2022年通年の人民元建てクロスボーダー決済金額が42兆1,000億元となり、2009年7月に人民元建て貿易決済が解禁されて以来、最高の金額を記録したことを明らかにした。また、中国の対外決済金額に占める人民元の割合は49.0%に達し、過去に遡れる限りで最高の水準となった。
     
  2. 人民元建てクロスボーダー決済金額のうち、貨物(モノ)、サービス、収益及び経常移転から構成される人民元建て貿易決済金額は、2022年通年で10兆5,000億元と過去最高を記録し、前年比伸び率も32.0%増となった。
     
  3. 2022年の人民元建て貿易決済金額増加の要因としては、①景気対策の一環として企業の輸出支援や為替リスクヘッジのため人民元建て決済が奨励され規制緩和も行われたこと、②経済連携協定の枠組みの下でも人民元建て決済が奨励されたこと、③資源や食料の輸入で中国がバーゲニングパワーを高め人民元建て決済が進めやすくなったこと、が指摘できよう。
     
  4. 2022年以降、資本取引における人民元建て決済金額拡大に資するものとして、香港を経由した新たなコネクトである上場投資信託(ETF)コネクト及びスワップコネクトの創設が進められ、中国本土・香港間のストックコネクトの対象銘柄も拡大された。さらに、5年に1回行われる国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の構成通貨比率の見直しでは、人民元の比率が2015年の10.92%から2022年には12.28%に引き上げられた。
     
  5. 従来、人民元国際化は「継続しかつ慎重に進める」という方針であったが、2022年10月の中国共産党第20回党大会の政治報告では「秩序立てて推進する」という方針に変更された。戦略性が高まった新たな人民元国際化の方針の下で、2023年より上海外国為替市場の取引時間が延長された。また、ブラジルやアルゼンチンとの自国通貨建て決済の推進や、液化天然ガス(LNG)取引の人民元決済といった動きも出ており、いわゆる「脱ドル」の観点で、人民元が国際金融市場でどのように使われていくかも、新たな論点として注視される。

中国株式市場での発行登録制度改革の全面展開-政府による株式発行審査制度からの転換-

関根 栄一

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要約
 

  1. 2023年2月17日、中国証券監督管理委員会(証監会)は、株式発行登録制度の全株式市場への全面展開に関する制度・規則を公布し、即日施行した。同年4月10日には、同制度導入後、第1陣となる10社が上海・深圳証券取引所のメインボードに上場した。
     
  2. 株式発行登録制度とは、従来の証監会による審査・認可制度を転換し、証券取引所による審査を通じて証監会に登録し、株式発行を行う仕組みである。中国では、1990年12月に証券取引所が開業して以来、中央政府または証監会が直接、上場審査をしており、22年間に渡って続いてきた株式発行審査制度の転換となる。
     
  3. 株式発行登録制度は、メインボードでの全面展開に先立ち、新興市場(上海・科創板、深圳・創業板)で導入実験が行われてきた。同実験の結果を踏まえ、証券法等が改正され、各ボードの位置づけも明確にされ、情報開示を中心とした発行・上場手続き制度が整備された。また、発行体の法人形態では、種類株式発行企業の上場が科創板以外にも拡大された。併せて、財務及び会計面の審査基準は、従来の直近の財務指標ベースから、予想時価総額に基づく考え方に改められた。手続き面では、申請書類の証券取引所による受理日から数えて証監会による登録まで3ヵ月を越えてはならないという審査期間の上限も設けられた。
     
  4. 2023年4月のメインボードでの上場第1陣では、従来のIPO価格の上限慣行が撤廃された。登録制度の全面展開により、新株発行が常態化されることで、投資家の投資スタイルが変わり、今後、機関投資家の比率が高まる可能性もある。短期的には中国の経済再開(リオープン)の下での機動的なエクイティファイナンスの実現が発行体から期待されている。総じて、登録制度の導入は、市場と政府との関係を調整する動きの一環と言えよう。発行市場の規制緩和の一方、「上場会社監督管理条例」の制定等、上場会社に対する新たな監督体制についても、今後の整備動向が注目される。

常態化する米中対立で進むデカップリング-懸念される日本企業への影響-

関 志雄

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要約
 

  1. トランプ政権の時代から始まった米中経済対立は、バイデン政権になってからも続いている。米国は、対中「デカップリング」(分断)を目指しており、主な手段として、①貿易規制の強化、②対内・対外直接投資への規制強化、③通信業を対象とする規制強化、④半導体関連の対中輸出規制の強化、⑤金融分野への規制強化、⑥産業政策の強化、⑦同盟国との提携強化を進めている。
     
  2. 米国の攻勢に対して、守勢に立たされる中国は、長期戦に備えて、①貿易規制の強化、②対内直接投資への規制強化、③サイバーセキュリティとデータセキュリティの強化、④制裁に対応するための法整備、⑤輸出市場の分散化と「一帯一路」構想の推進、⑥産業政策と「双循環戦略」の推進に取り組んでいる。
     
  3. 米中のデカップリングを象徴するように、中国は、米国にとって最大の貿易相手国から、メキシコとカナダに次ぐ第三位に落ち込んでおり、対米直接投資も大幅に減少している。日本が米国に同調して中国けん制に積極的に乗り出したため、日中デカップリングの兆候も現れ始めている。

中国における公募基金管理人制度の確立-証券会社による公募基金管理業への進出促進策-

宋 良也

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要約
 

  1. 中国証券監督管理委員会(証監会)は2022年5月に、公募基金管理人制度を規定する「公開募集証券投資基金管理人監督管理弁法」を公布した。その狙いは、公募基金管理人として公募基金管理会社以外の資産管理機関の参入を促し、多様性を伴う形での、公募基金管理業の発展を目指すことにある。
     
  2. 今般の管理弁法では、公募基金管理会社の支配株主(持株比率50%以上)である証券会社が傘下の資産管理子会社を通じて公募基金管理人資格を取得することが認められた。公募基金管理会社の株主になるための資格要件は厳格化された。また、外資の金融持株会社による中国国内の公募基金管理会社への出資が容認された。
     
  3. これらを受け、証券会社による公募基金管理業への進出方法としては、傘下の資産管理子会社を通じた公募基金管理人資格の取得が主流となりつつある。また、証券会社が既に公募基金管理業務ライセンスを保有する場合、公募基金管理業務を継続するべく、同ライセンスを資産管理子会社に一本化する動きもある。
     
  4. 中国における証券会社は今後、投資一任サービスや「口座型」個人年金分野において、公募商品を活用した資産管理業務の多様化を図っていくことと想定されよう。また、金融持株会社が公募基金管理会社の主要株主となることが認められたことは、外資系金融機関の参入にもプラスと考えられる。

個人マーケット

アジアにおけるファミリーオフィス・ハブとしての地位向上を目指すシンガポールと香港

北野 陽平、王 月

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要約
 

  1. アジアを代表する国際金融都市のシンガポールと香港は近年、国際的なウェルス・マネジメントのハブとしての地位向上に向けて、ファミリーオフィスの誘致に取り組んでいる。
     
  2. シンガポールでは、ファミリーオフィス向けのインセンティブが提供されていることもあり、ファミリーオフィスが右肩上がりに増加してきた。政府・金融規制当局は、「質の高い」ファミリーオフィスを誘致する姿勢を示すとともに、専門人材の育成・開発に取り組んでいる。
     
  3. 香港は、巨大市場である中国本土とのゲートウェイとなっていることを強みとする。香港政府・金融規制当局は、ファミリーオフィス設立支援チームの設置や税制優遇制度等のインセンティブを通じて、ファミリーオフィスの誘致を強化している。
     
  4. アジアのファミリーオフィスは、長期的に資産を保全するという観点からサステナビリティを重視し、サステナブル投資やフィランソロピー(社会貢献)への関心を高めている。そうした中、シンガポールと香港では、サステナビリティ関連の取り組みも促進されている。
     
  5. 今後、シンガポールと香港におけるファミリーオフィスの増加を後押しし得る要因として、①アジアにおける中長期的な超富裕層の増加と資産承継の進展、②スイスのウェルス・マネジメント市場の地位が相対的に低下する可能性、が挙げられる。

アセットマネジメント

サステナブルな社会の実現を目指す米国ドナー・アドバイズド・ファンド

岡田 功太、船津 太佑

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要約
 

  1. 米国のドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)は、寄付を社会課題の解決を図る非営利団体へ効率的に繋ぐ公益法人として注目を集めている。DAFは、①寄付者(ドナー)が公益法人(スポンサー)に資産を拠出することで税制優遇を享受し、②拠出資産をスポンサーが選定したファンドで資産運用し、③ドナーの指示に基づいて運用資産を非営利団体に寄付する仕組みである。
     
  2. 米国最大のDAFスポンサーであるフィデリティ・チャリタブルは、現金、非上場株式、暗号資産など多様な資産の拠出を受け入れており、18万超の非営利団体に寄付している。フィデリティ・チャリタブルは、ドナーに複数の個別ファンドを提供しているが、ドナーがフィデリティ・インベストメンツ提携先の投資顧問会社から助言を受けることも容認している。
     
  3. シリコンバレー・コミュニティ財団は、シリコンバレー地域の課題解決を目指すDAFスポンサーであり、教育や医療分野において公益事業を行う非営利団体に寄付している。同財団は、ドナーに対してアイコニック・キャピタル等が運用するファンドを提供している。
     
  4. 米国におけるDAFは、ドナーによる多様な資産の拠出を受け入れ、その運用を通じて公益増進を目指している。日本の公益法人も、管理運営する基金において、拠出受入資産、投資対象資産、寄付先団体の多様化を図り、サステナブルな社会の実現をより一層後押しすることも検討に値するのではないだろうか。

米国における大学の資産運用戦略にみるアセットオーナーの運用高度化の先進事例

岡田 功太、船津 太佑

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要約
 

  1. 現在の日本においては、アセットオーナーや資産運用会社の運用高度化が求められている。岸田文雄首相は2023年4月に、日本が国際金融センターとして発展していくには資産運用業等を抜本的に改革する必要があると言明した。また、金融庁は、「資産運用業高度化プログレスレポート2023」において、貯蓄から資産形成に向けた制度整備を進めるにあたって、日本のアセットオーナー及び資産運用会社等による運用高度化が必要であるとした。
     
  2. 米国の大学は、50年以上前から資産運用に積極的に取り組んでいる。米国の大学で最大級の運用資産総額を誇るハーバード大学、イェール大学、テキサス大学・テキサスA&M大学投資会社(UTIMCO)は、伝統的資産やオルタナティブ・ファンドに分散投資し、運用成果の一部を、学生への経済的支援、学術プログラムの運営、優秀な人材の獲得等に充てている。
     
  3. 日本の大学においても、資産運用に積極的に取り組み、教育研究活動に必要な財政的資源を強化することで、日本の科学技術開発力・イノベーション創出力の向上を促すことも検討に値しよう。アセットオーナーとしての大学が運用力を向上させることで、資産運用会社をはじめとするインベストメント・チェーンの機能強化を通じた金融・資本市場の更なる活性化を促すことができるのではないだろうか。

米国における公益法人の資産運用戦略-美術館・博物館等による文化・アート振興-

岡田 功太、船津 太佑

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要約
 

  1. 岸田政権は2023年6月に、「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023)において、文化芸術資源の国内外への発信強化等は経済成長に寄与するものであるとした。また、新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議は、文化・アート振興を牽引してきた公益法人の改革活動をより一層活性化させるべく、株式投資等の資産運用の促進を図る方向性を示した。
     
  2. 米国の美術館・博物館等は、17年以上前から資産運用に積極的に取り組んでいる。米国の著名な公益法人であるメトロポリタン美術館、スミソニアン機構(スミソニアン博物館)、ニューヨーク公共図書館、トリニティ・ウォール街教会は、伝統的資産やオルタナティブ・ファンドに分散投資し、運用成果の一部を、文化・アート振興や文化財の有効活用に充てている。その際、依拠しているのが「公益団体の慎重なファンド管理に関する統一州法(UPMIFA)」である。
     
  3. 今後、日本の美術館・博物館等は、日本のソフトパワーの源泉ともいえる文化資源やアート作品をより一層拡充するために、財政的資源を確保すべく、資産運用を積極的に行っていく必要があろう。日本においても、UPMIFAのような制度を整備することで、美術館・博物館等による分散投資の促進を通じて、資産運用の活発化を図ることができるのではないだろうか。

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