特集3:地方債の新展開

世界初の共同発行形式によるグリーン地方債
-地域のカーボンニュートラル達成に向けた一歩に-

江夏 あかね

要約

  1. グリーン共同発行市場公募地方債(以下、グリーン共同債)の第1回債(年限10年、500億円、参加団体36)が2023年11月17日、条件決定した。共同発行形式のグリーン地方債として世界初の事例となったグリーン共同債第1回債は、金利変動(ボラティリティ)が比較的大きい局面での条件決定だったが、同月9日に条件決定した共同発行市場公募地方債(10年債、以下、通常の共同債)に比して、グリーニアムが発生した。
  2. これは、(1)参加団体及び通常の共同債と均一のクレジット、(2)広範な充当事業、(3)ツインボンド近似の形式、といった商品性の特徴が、経済合理性も前提に全国の地方公共団体によるカーボンニュートラル達成に向けたプロジェクトを支援したいと考える投資家に訴求し、幅広い投資家層の需要を集めたこと等が背景と考えられる。
  3. 今後、小規模のグリーンプロジェクトの資金調達においても利用可能で手間やコスト負担を軽減できるといったメリットを期待して、グリーン共同債への参加を検討する地方公共団体が増える可能性がある。また、フレームワークで広範な充当事業が示されたこともあり、グリーン共同債を参考に、個別にグリーンボンド/ローンによる資金調達を検討する地方公共団体が増えることもあり得ると言える。
  4. グリーン共同債が地域のカーボンニュートラル達成に向けてさらに活用されるか否かは、金融市場を取り巻く環境による。同時に、金融市場でグリーンウォッシュに対する懸念が強い傾向にあることに鑑みると、(1)フレームワークに沿って透明性及びガバナンスを確保しながら起債運営管理を行うこと、(2)資金を充当した環境プロジェクトがしっかりとインパクトを創出し、地域の環境課題解決に貢献し続けること、が大切になると想定される。