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西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 弁護士 武井 一浩
要約
日本企業の稼ぐ力の強化、イノベーションの活性化等企業の持続的成長を支える攻めのガバナンスは、現在も日本経済における一丁目一番地の政策課題である。特にサステナビリティ対応と中長期的企業価値向上とを同期化させるサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)戦略を実現するサステナビリティ・ガバナンスが重要となる。サステナビリティ・イシューが複雑化する中、デュー・プロセス的な発想を踏まえた「闘える力」が備わっていないとSXの実現は難しい。グローバル比較でみて「闘える力」の実装が日本企業の課題であり、ヒトモノカネへの真の投資を本格化させる必要がある。
東京理科大学大学院 教授 加藤 晃
要約
最高財務責任者(CFO)は企業財務に責任を持ち、万一、サイバー攻撃を受けた場合でも被害を最小限に抑える使命がある。リスクマネジメントの目的は、「リスクコスト(リスクマネジメント総費用対売上高)」の最小化による企業価値の最大化である。手段としては、リスクコントロール(社員教育、最新ソフトの導入、取引先企業へのデューディリジェンス、ベンダーの選別、事業継続計画〔BCP〕の策定など)とリスクファイナンス(サイバー保険による費用ヘッジ)がある。米国大企業のリスクコストは約1%。サイバー攻撃を対象とした費用対効果の高いリスクコントロールとリスクファイナンスのバランスを検討する必要がある。今後、その取り組みが株価に織り込まれるかもしれない。
関根 栄一、宋 良也
要約
中国証券監督管理委員会は2023年2月27日に、中国証券業における初めてのサイバーセキュリティの関連規則を公表した。同規則は、上位法の「データ三法」を証券業に適用・具現化するもので、証券取引所等の重要なネットワーク施設や情報システムの安全確保を重視している。また、証監会は証券業界全体をカバーする集中的バックアップデータセンターを設立し、ステークホルダーの利用を奨励している。
一方で、海外の関連機関からは、管理監督当局が主導する施策よりも、企業の自主性の発揮を重視する立場での意見表明もなされた。今後、上記規則が現場レベルにどこまで反映されていくのか、適用対象機関のサイバーレジリエンス向上にどの程度寄与するのかが、注目される。
経済産業省 商務情報政策局 サイバーセキュリティ課 池田 佳高
要約
- サイバーセキュリティ経営の定着を目指すため、(1)サイバーセキュリティ経営の具体化、(2)サイバーセキュリティ経営の実践、(3)サイバーセキュリティ経営の可視化の3つのステップにより、必要な対策を実施していくことが必要である。
- 企業は、ファーストステップであるサイバーセキュリティ経営の具体化のために「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」を、セカンドステップであるサイバーセキュリティ経営の実践のために「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0実践のためのプラクティス集」を、サードステップであるサイバーセキュリティ経営の可視化のために「サイバーセキュリティ経営可視化ツール」を活用していくことが求められる。
- 経営者及び最高情報セキュリティ責任者(CISO)等は、これらのガイドライン等を活用しながら、必要なサイバーセキュリティ対策を実施するとともに、実施した対策についてはステークホルダー等の関係者に積極的な情報開示を行ってほしい。
野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵
要約
- 昨今、企業のサイバー被害のニュースを、連日のように耳にするようになった。有価証券報告書の「事業のリスク」に、サイバーリスクについて挙げる企業も急速に増えている。日本IT団体連盟が2022年12月、東京証券取引所(以下、東証)プライム上場企業の有価証券報告書を集計したところ、1,712社(全体の93%)が何らかの形でサイバーリスクに関する記載を行っていた。2019年の水準(東証一部全体の58%)と比べ急速に増えている。
- 有価証券報告書のような投資家向けの開示に、企業がサイバーリスクについて記載するようになったこと自体が大きな変化だ。数年前までは、投資家が関わるような問題とは認識されず、企業も公衆の面前で明らかにすることではないという風潮が強かった。しかし、米国証券取引委員会(SEC)は2023年12月、投資家向け開示であるForm10-K(年次報告書)とForm8-K(適時開示)にサイバーセキュリティに関する開示を追加した。また、グローバルに統一されたサステナビリティ開示を目指す国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)でも2022年7月、将来の基準検討候補にサイバーセキュリティを挙げた。
- 企業開示は投資家保護の目的ではじまり、投資判断に必要な情報が追加されていった。そして今や投資家が投資判断に用いるというより、投資家の企業に対するエンゲージメントや議決権行使といった影響力に期待した、各国の規制や社会的イニシアティブに関係した情報が追加されるようになった。例えばコーポレートガバナンスや、人権、排出量に関する開示などだ。もちろん企業が政策に沿わない、あるいは社会的に批判の対象となる行動を取れば、最終的には投資家のリスクとなる。
- サイバーリスクは排出量のように、サステナビリティのリスクとして開示項目になっていくのだろうか。適切な企業開示があれば、投資家の判断の助けとなるだけでなく、投資家が企業にしかるべき対応を求めることで問題の解決、リスクの低減につながるだろうか。本稿では、(1)企業開示が持つ役割の変化、(2)企業のサステナビリティや企業価値と開示、(3)サステナビリティの課題としてのサイバーリスクという順に整理した上で、(4)今後サイバーリスクに関する開示が目指すべき方向について論考する。
野村アセットマネジメント 債券サステナブル・インベストメント・ヘッド ジェイソン・モーティマー
要約
- 企業は、自社およびサプライチェーン上の取引先企業のネットワークの脆弱性に起因するサイバーセキュリティ・リスクに直面している。自動車、金融、小売りの各業種において大きな注目を集めた有害事象は、サプライチェーンに対するサイバー攻撃がバリューチェーン全体にわたって業務を混乱させ、データを危険にさらし、その結果、重大な経済的損失や重要な国家機能への障害をもたらす可能性があることを示している。
- 上流・下流の取引先企業が抱えるサード・パーティへの脆弱性を特定し、緩和するために、「サイバー・サプライチェーン・リスク管理(C-SCRM)」は不可欠であり、企業の最高情報セキュリティ責任者(CISO)、規制当局、投資家にとっても重要な関心事項となっている。
- サイバーセキュリティに関する定量的なパフォーマンス・データを活用して、サプライチェーン全体のリスクを評価した上で、バリューチェーンの全階層において効果的なサイバーセキュリティの枠組みを確実に構築するよう企業に働きかけることが、投資家にとって選択肢となる。これは、スコープ3(サプライチェーン)における排出量と労働者の権利が一般的にモニタリングされているのと相似形である。
- 投資家はこのような先を見越したアプローチによって、重大なリスクを特定し、投資リターンの改善を期待できるようになる。同時に、全体的なサイバー・レジリエンスの強化や、サイバーセキュリティ・リスクに関連する社会経済的な影響への対応にもつながる。
(本内容は参考和訳であり、原文〔Original〕と内容に差異がある場合は、原文が優先されます。)
原文(Original)
Investor Engagement for Cyber Resilience in Supply Chains
- A new method for integration and effective corporate engagement on cybersecurity supply chain risks -
Jason Mortimer, Head of Sustainable Investment - Fixed Income, Nomura Asset Management
- Companies face cybersecurity risks from vulnerabilities in their own networks and those of their supply chain partners. High profile incidents in the automotive, financial, and retail sectors demonstrate that supply chains cyberattacks can disrupt operations and compromise data across the value chain, causing material financial losses and impairment to critical national functions.
- Cybersecurity Supply Chain Risk Management (C-SCRM) is essential for identifying and mitigating third-party vulnerabilities in both upstream and downstream partners, and is now a key concern for business CISOs regulators, and investors.
- Investors can leverage quantitative cybersecurity performance data to assess risks across supply chains, engaging with companies to ensure that effective cybersecurity frameworks are in place across all tiers of their value chain - just as Scope 3 supply chain emissions and labor right standards are commonly tracked and managed.
- This proactive approach can identify material risks and potentially improve investment returns, while contributing to overall cyber resilience and addressing socio-economic impacts related to cybersecurity risks.
野村アセットマネジメント 債券サステナブル・インベストメント・ヘッド ジェイソン・モーティマー
要約
- サイバーセキュリティは、デジタル化が進む市場において、企業のレジリエンス、国家の安全保障、経済の繁栄を実現するために不可欠な役割を果たしている。投資家の意識は高まりつつあり、技術的な専門家ではないアナリストが企業のパフォーマンスを比較、評価できるように、信用格付けに類する標準化されたサイバーセキュリティ・リスク・レーティングが実用化されている。
- 投資家にとっては、そのような発行体固有のパフォーマンスとリスクに関する指標を、地域レベル、業種レベルで集計することによって、パフォーマンスが脆弱な分野の把握が容易になり、これまで以上に的を絞ったリスク評価と生産性の高いコーポレート・エンゲージメントが可能になる。
- 企業のサイバーセキュリティ・パフォーマンスは地域、業種によって異なるが、明確な傾向も見受けられる。グローバル社債市場の代表的な発行体のデータを集計した結果、オーストラリア・ニュージーランド、北米、英国・アイルランドがパフォーマンス上位の地域であることがわかった。その一方で、日本とアジア太平洋地域のパフォーマンスは、先進国市場、新興国市場の比較対象国を下回った。業種別に見ると、通信、一般消費財、資本財、情報技術といった業種の企業はサイバーセキュリティ・リスクへの備えが相対的に脆弱であり、一方で金融セクターの企業は全般に備えが最も進んでいることが確認された。
- このような違いを理解することで、投資分析においてサイバーセキュリティ・リスクの効果的な統合が促進されるとともに、リスクに関する新たな洞察と的を絞ったコーポレート・エンゲージメントの機会が投資家に提供されることになる。
(本内容は参考和訳であり、原文〔Original〕と内容に差異がある場合は、原文が優先されます。)
原文(Original)
Global Corporate Cybersecurity Performance Heat Map
Jason Mortimer, Head of Sustainable Investment - Fixed Income, Nomura Asset Management
- Cybersecurity is vital to ensuring corporate resiliency, national security, and economic prosperity in an increasingly digitized market. Investor awareness of cybersecurity is growing, and standardized cybersecurity risk ratings, like credit ratings, are available to enable non-technical analysts to assess and compare companies' cybersecurity performance.
- Aggregating such issuer-specific metrics of organizational cybersecurity performance and risk exposure up to the regional- and sector-level can help investors grasp where cybersecurity performance is weaker, for more focused risk assessments and productive corporate engagements.
- Corporate cybersecurity performance varies by region and industry, but follows a discernable pattern. Based on aggregate data from companies representing global corporate debt market, the top-performing regions for cybersecurity are Australia and New Zealand, North America, and the UK and Ireland. Cybersecurity performance in Japan and Asia-Pacific to lag behind developed- and emerging market peers. By sector, companies in the Communications, Consumer Discretionary, Industrials, and Technology sectors exhibit lower cyber preparedness, while Financial sector companies tend to have the highest.
- Understanding these variations facilitates effective integration of cybersecurity risks in investment analysis, offering investors new risk insights and opportunities for targeted corporate engagement.
野村證券IBビジネス開発部(野村資本市場研究所 野村サステナビリティ研究センター 客員研究員)今川 玄
要約
- 信用格付においてサイバーリスクの影響が拡大しつつある。外資系格付会社の大手2社であるS&Pグローバル・レーティング(以下、S&P)、Moody'sは従前からサイバーリスクについて言及していたが、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立といった地政学リスクの高まりがより鮮明になって以降、格付評価上のサイバーリスクに関する発信を大きく増やしている。S&Pは2022年3月に格付手法を見直し、サイバー攻撃を受ける前であってもサイバーリスクへの備えが不十分な場合は格付に下押し圧力がかかることを示した。またMoody'sもサイバー攻撃が格付に影響を与える要因・経路を明確化し、信用力評価におけるサイバーセキュリティの重要性を改めて指摘した。
- 両社に共通しているのはサイバーセキュリティの取り組みは企業の一部の部門・部署が担うものではなく、経営陣が直接責任を持って対応すべきガバナンスの問題と捉えている点である。ガバナンス評価は格付評価の根幹を成す要素であり、特に外資系格付会社は重視している。S&Pの格付手法の見直しでは、サイバーリスクを「経営陣とガバナンス」の評価項目に組み入れている。
- サイバー攻撃に伴う格付アクション(格下げ、格付見通しの引き下げ、格下げ方向での見直し)はこれまでのところ少数にとどまっている。格付を取得する企業の多くは規模が大きく財務耐久力も相応にあり、サイバー攻撃による事業上・財務上の影響を吸収する余力が高かったためとされている。しかし、地政学リスクの一層の高まり、デジタル化の進展、生成人工知能(AI)や量子コンピューターといった新技術の出現等によって、サイバーリスクの格付へのネガティブな影響が拡大・深化することをS&P、Moody'sともに予測している。一方、日系格付会社からは2024年10月末時点で、格付評価上のサイバーリスクに関する言及はほぼなく、今後の発信・情報提供が待たれる。
西山 賢吾
要約
- 「新しい資本主義」の重要施策として人的資本投資が取り上げられた。時代の急速な変化に加え、日本では少子高齢化の問題もあり、競争力や企業価値の源泉となる人材を確保するかが企業の大きな課題であり、人的資本の投資に対する注目が高まっている。
- こうした課題への施策として人的資本経営がある。人的資本経営は、経営理念や存在意義(パーパス)をベースとして、将来ありたい姿と現在の姿とのギャップの把握と解消に向け経営戦略/人事戦略を遂行する。そして、遂行結果に関するステークホルダー(利害関係者)とのエンゲージメントや自己評価を踏まえブラッシュアップした戦略を改めて遂行するという一連の循環である。
- 従業員の企業への帰属意識やロイヤリティを高めること、そして国が進める「資産運用立国」への支援になることから、人材戦略における施策の一つとして「自社株式保有の奨励」を「金融経済教育」とセットで従業員に提供することは検討に値するであろう。
- 人的資本経営と人的資本の開示(可視化)はいわば「車の両輪」である。人的資本開示のキーワードは、「法定開示化の進展と任意開示の深化」であり、「規定演技」である「法定開示」をベースに、いかに「自由演技」である「任意開示」の部分で各企業の独自性を出すかが問われる。
- 人的資本への関心と人的資本の開示議論の高まりは人的資本経営構築の好機である。積極的な情報開示、及び投資家などステークホルダーとの対話(エンゲージメント)を通じて説明し、自社の人的資本経営に対し理解と支持を得ることが非常に重要と考える。
西山 賢吾
要約
- 人的資本経営に対する関心が高まる中、主役となる「人・従業員」の声を人事・経営全般に役立てることを目的に、彼らに対し包括的なアンケート調査「従業員サーベイ」を行う企業を目にする機会が増えている。一方、2023年3月期の有価証券報告書(以下、有報)より人的資本に関する開示が義務化された。法定開示書類である有報では、企業が重要と考える諸点を、簡潔、かつ分かりやすく記述することが肝要である。よって、有報での「従業員サーベイ」に関する記述には、従業員を活かす経営に対する企業の「本気度」が現れると見られる。
- このような問題意識の下で、Russell/Nomura Large Cap構成企業(300社)の最新の有報から、各社の従業員サーベイに関する記述を調査した。記述のあった188社を見ると、サーベイの手法が多岐にわたるため、調査結果の企業間比較はかなり難しいことが分かった。さらに、サーベイのKPI(重要達成度指標)の意味や算出方法等に触れていない企業が多いことや、統合報告書など任意開示情報とのすみ分けが十分とは言えない企業も見られるなど、開示に関する課題は少なくない。
- その一方で、サーベイの結果を役員報酬を決める項目として採用する企業や、サーベイで浮き彫りになった諸課題及びそれへの対応などについて、図表等を交え利用者に分かりやすい形で説明する企業も見られるなど、「本気度」の伝わる有用な情報が得られることも分かった。企業価値向上の源泉となる人的資本の観点から、従業員サーベイ並びにその結果に関する有報での情報開示の有用性、及び注目度は今後さらに高まるであろう。
西山 賢吾
要約
- 日本における過去20年のコーポレートガバナンス議論のテーマは、「会社はだれのもの」論が盛んであった2005~2008年頃、コンプライアンスが強く意識された2009~2012年頃、成長戦略の中の重要施策とされた2013~2018年頃、そしてサステナビリティ(持続可能性)への関心が広がった2019年~現在と変遷してきた。
- 第二次安倍政権下で成長戦略の柱としてコーポレートガバナンス改革を取り上げてから10年が経過した。この間、一定の成果は見られるものの、国際的に見たROE(自己資本利益率)は依然として低いことや、企業の保有現預金の積み上がりなどの課題が残る。企業の収益性や資本効率性を高め、経済システムに良い「お金の流れ」を作るというコーポレートガバナンス改革の目的達成に向け、さらに歩みを進めることが期待される。
- コーポレートガバナンス改革が進んだことで、株式保有を巡る2つの変化が生じた。一つは、株式保有構造が取引関係の維持、発展を主な保有動機とした政策保有主体から、インカムゲインやキャピタルゲインの獲得を主な保有動機とする純投資家主体へ変化したことである。
- もう一つは、保有先企業の経営に関心を持ち、経営陣による企業価値向上への健全なリスクテイクを後押しすることが株主・投資家の重要な役割と期待されるようになったことである。これらの変化により、改革を一段と進める上では、企業と株主・投資家間で「緊張感を孕んだ相互信頼関係」を基礎とした新しい関係の構築が不可欠といえるであろう。
江夏 あかね
要約
- 人工知能(AI)が急速に発展・普及する中で、リスクを管理・抑制しつつ最大限の便益を得ることを目的とするAIガバナンスの重要性が世界的に認識されてきた。
- 各国・地域でスタンスは異なるものの、政府は法規制・ガイドライン等の対応を進め、企業自身も取締役会の監督体制や指針の整備、情報開示等の対応を進めている。さらに、近年は投資家も投資先企業のAI関連リスクに着目し、原則・ガイドラインの策定や情報開示等の対応を求めているほか、幅広いセクターの企業における対応状況に着目しつつある。
- 金融資本市場の観点から、AIガバナンスを企業等にさらに浸透させていくことは、企業価値維持・向上、ひいてはリスク調整後の投資パフォーマンスの維持・向上にもつながり得るため、重要と言える。
- その意味での今後の論点としては、(1)AIガバナンスの重要性に関する理解の促進、(2)情報・データの適切な開示、(3)第三者評価等の仕組みの整備、が挙げられる。特に、1点目について、米運用大手のフェデレーテッド・ハーミーズのように企業に対してAIに関するエンゲージメントを行う投資家が近年見られるようになっている。投資家が企業に対してエンゲージメントを実施するに当たっては、AIは、情報技術(IT)面のみの課題ではなく、企業価値に影響を及ぼし得る重要な経営課題であることを繰り返し伝え、企業の経営陣における意識向上を促すことが大切と言える。
江夏 あかね
要約
- 金融庁は2024年10月4日、「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を公表した。ガイドラインは、監督指針等とは別のものとして、さらに詳細な内容が盛り込まれた形での策定となった。
- ガイドラインの適用対象となっている金融機関等は、銀行、証券を始めとして21の業種にわたっており、業界横断的と言える。サイバーセキュリティ管理態勢については、「基本的な対応事項」と「対応が望ましい事項」と2段階に分けて説明されているほか、一律の対応を求めるものではなく、リスクベース・アプローチを採ることが求められるとの留意点が示された。さらに、昨今注目が集まっているサードパーティに関するリスク管理についても独立した項目が挙げられた。
- ガイドラインは、公表と同時に適用されたこともあり、対象金融機関等は2段階の対応事項や自身が取り巻く状況も踏まえて、サイバーセキュリティ管理態勢を改めて見直し、強化する必要がある。金融業界全体でサイバーセキュリティリスクを軽減し、業務の健全性及び適切性を確保していくための論点としては、(1)企業価値に影響を及ぼし得る経営課題としての意識の醸成、(2)連携と共助の強化、(3)投資家との対話も通じた態勢見直し・強化、が挙げられる。
- 特に、1点目について、サイバーセキュリティは情報技術(IT)課題ではなく、企業価値に影響を及ぼし得る経営課題であることを改めて意識し、経営陣のリーダーシップの下、管理態勢の強化にコミットしていくことが重要と言える。
野村 亜紀子
要約
- 米国では、近年、401(k)プランなど確定拠出型年金(DC)プランのサイバーセキュリティが強調されるようになっている。人々の退職資産におけるDCプランの重要性が増していることに加え、DC加入者等の資産が窃取される事案の発生などが背景にある。
- DCプランは、加入者の個人勘定の記録管理を行うレコードキーパー等、サードパーティーが運営管理を担う。ランサムウェア、ソーシャルエンジニアリング、なりすまし、口座の乗っ取りなどがDCプランのサイバー脅威として挙げられるが、各主体が適切にサイバーリスクに対応する必要性が高まっている。
- DCプランは、従業員退職所得保障法(ERISA)の規制下にあり、企業はフィデューシャリーとして、適切な業者選定と監視を行う責務を負う。所管官庁である労働省から、企業、サービス提供業者、加入者等に向けたサイバーセキュリティに関するガイダンスが発出されており、留意事項やベストプラクティスが示されている。
- 日本のDC制度も、運営管理の外部委託など基本構造は米国と類似しており、共通の論点は参考にするのが適当であろう。企業がサイバーセキュリティ強化を推進するに当たり、DC制度の対応も確保することが重要と思われる。
江夏 あかね
要約
- 環境課題を解決するための金融(グリーンファイナンス)は21世紀に入って、債券やローンといった債務(デット)を中心に発展してきたが、2020年代に入った頃から株式(エクイティ)に関して徐々に取り組みが見られるようになっている。
- 本稿では、(1)グリーンな活動に取り組みかつ一定の要件を満たす企業の株式をグリーンエクイティ等の名称で指定する仕組みを実施する証券取引所(ナスダック・ノルディック及びブラジルのサンパウロ証券取引所〔B3〕)、(2)グリーンエクイティ、サステナビリティ・リンク転換社債(SLCB)、グリーンCB、グリーン社債型種類株式といった手法を通じてグリーンエクイティ関連の資金調達を行った企業(日本プロロジスリート投資法人、イタリアの石油・ガス大手のエニ〔Eni〕及び日本のインフロニア・ホールディングス)、による取り組みを概観した。
- 発行体にとっては、グリーンエクイティ指定やグリーンエクイティ関連金融手法による資金調達を通じて(1)資金調達手段の多様化、(2)インパクト投資家や個人投資家も含めた投資家層の拡大、(3)(金融市場環境にもよるものの)資金調達コストの低減、(4)投資家等のステークホルダーへの安心感の醸成、等のメリットが期待される。
- グリーンエクイティが金融資本市場に広まっていくための論点としては、(1)グリーンデット(グリーンボンド等)と同水準以上の信頼性の確保、(2)グリーンも含めた成長戦略の展開、が挙げられる。
林 宏美
要約
- 生物多様性の損失に歯止めをかけ回復基調に乗せる「ネイチャーポジティブ」実現に向け、必要な資金が大幅に不足している点が大きな課題となっている。そのため、昆明・モントリオール生物多様性枠組では、生物多様性の保全に向けた資金調達手段として、民間資金の動員を見据えて、生物多様性クレジットをはじめとした革新的なスキームの活用も視野に入れられている。
- 生物多様性クレジットとは、生物多様性ユニットの組成・販売を通じて、生物多様性に対してポジティブな成果をもたらす取り組みのファイナンス手段に用いられる。生物多様性クレジットでは、生物多様性へのポジティブな成果の有効性について第三者による検証が可能であり、取引が可能、かつ比較可能性が担保されること等が求められる。
- 生物多様性クレジットの活用事例としては、気候変動対応と生物多様性の保全を組み合わせたクレジットであるエコオーストラリア、スウェーデン農業大学のパイロット・プロジェクト等がある。オーストラリア・コモンウェルス銀行とオーストラリア準備銀行(RBA)等は、国内生物多様性クレジットを取引するデジタル取引所設立に向けた取り組みに着手している。また、グローバルに利用できる生物多様性評価アプローチを開発する動きも出てきている。
- 生物多様性の評価方法や指標の標準規格の検討を進めながら、生物多様性オフセット・スキームとの連携、気候変動対応と組み合わせたクレジットの活用等も視野に入れると、生物多様性クレジットのファイナンス手段としての今後の活用拡大が期待できよう。
小立 敬
要約
- 米国では、十分なサービスを受けていないコミュニティに投資や融資を提供するコミュニティ開発金融機関(CDFI)という民間金融機関が存在する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として、多くの政府資金がCDFIを通じて供給されたことから、改めて注目を集めている。
- CDFIは、政府機関であるCDFIファンドが提示する適格要件を満たす金融機関が申請し、認定される仕組みである。CDFIファンドが提供するプログラムの下、CDFIは金融支援(助成金)や技術支援を受けることが可能であり、CDFIファンドは、助成金に対して民間投融資によってレバレッジをかけることをCDFIに求めている。
- CDFIには、銀行やクレジット・ユニオン(信用組合)という預金取扱機関に加えて、ローン・ファンドやベンチャー・キャピタルといったノンバンク金融仲介機関もあり、ビジネスモデルは多様である一方、コミュニティ開発や金融包摂のための投融資を実行するというミッションが根底にあるミッション主導型の金融機関である。
- 米国のコミュニティ開発金融は、CDFIを含むミッション主導型金融機関、CDFIファンドを含む政府機関や地方政府、財団、機関投資家、預金取扱機関、さらに民間企業といったリスク許容度の異なる様々な市場参加者の参加によって成立しており、結果としてブレンデッド・ファイナンスによって多様な資本階層が構築されている。
- 日本の金融機関には地方創生やサステナブル・ファイナンスの推進が要請されているが、米国のコミュニティ開発金融が示唆することは、ブレンデッド・ファイナンスの活用がそのような社会的課題の解決に寄与する可能性があるということではないだろうか。
岡田 功太、佐々木 遼太
要約
- 米国では、個人が資産承継を行うにあたって、ドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)が活用され始めている。DAFとは、(1)寄附者(ドナー)からの寄附を受け入れ、(2)寄附資産を運用し、(3)非営利団体への助成を行う基金である。ドナーは、DAFに寄附した際に税制優遇措置を受け、寄附資産の運用先及び助成先について指図を行う。
- 米国最大の独立系DAFスポンサーであるナショナル・フィランソロピック・トラスト(NPT)は、金融機関との提携を通じてドナーの拡大に取り組んでいる。また、NPTは、ドナーが生前に保有していた資産をDAFに遺贈したり、ドナーの配偶者、親族、友人等にDAFを相続したりする資産承継支援サービスを提供している。
- 日本にも米国のDAFスポンサーと類似する機能を有する財団がある。相続資産市場が拡大する中、日本の金融機関は、財団との提携を通じて、(1)寄附ニーズを有するドナーに基金を紹介する、(2)寄附資産を運用する、(3)ドナー及びその家族の資産承継に関するコンサルティングを行う、という事業を展開することも、有力な選択肢になり得よう。
富永 健司
要約
- 米国を本拠とする世界最大級の資産運用会社であるブラックロックは2024年6月、脱炭素社会への移行(トランジション)における投資機会を提供する5本の上場投資信託(トランジションETF)を欧州で設定・導入した。同社は、トランジション投資を「脱炭素経済への移行に対応し( “Preparing for” )、ネットゼロに整合し( “Aligned to” )、移行により創出される事業機会からの恩恵を受け( “Benefiting from” )、そして移行に寄与すること( “Contributing to” )に焦点を当てる投資」と定義し、トランジション関連の商品提供を強化している
- これらのETFは、将来的な温室効果ガス排出削減の取り組みに関する指標として、信頼性の高い排出削減目標を有するかということを銘柄選定基準に組み込むことで、トランジションに関連する企業への投資機会を提供している。
- トランジションETFに関連する意義として、(1)トランジション投資における評価軸の提示、(2)トランジション・ファイナンスにおける投資の選択肢の拡大、が挙げられる。
- 今後、トランジションETFの導入により、トランジション投資における評価軸の検討が進むことで投資家の裾野が拡大していくのか、そしてトランジション・ファイナンスにおける投資の選択肢の拡大が、中長期的に企業の資金調達の幅を広げ、トランジションに向けた事業の促進につながっていくのか、さらにこれらの動きが脱炭素社会の実現へ寄与していくのか注目される。
富永 健司
要約
- 欧州連合(EU)の証券市場の監督を担う欧州証券市場監督機構(ESMA)は2024年5月、金融市場におけるグリーンウォッシングのリスクに対応するために、環境・社会・ガバナンス(ESG)及びサステナビリティに関連する用語を使用したファンドの名称に関するガイドラインを含む最終報告書を公表した。
- ガイドラインの適用により、資産運用会社は、ESG・サステナビリティに関連する用語をファンドの名称に使用する際、(1)サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の8条又は9条に合致する開示を行う投資額が全体の8割以上であること、(2)除外基準のクリア、(3)その他の基準への対応、が求められることとなる。
- ガイドラインの適用にあたっては、SFDRの8条又は9条に合致する開示を行うファンドを中心に広範な影響が見込まれている。具体的には、ガイドラインにおける除外基準による影響について、株式の売却か名称変更が求められる可能性があるとの見方がでている。
- 今後の注目点として、(1)市場参加者によるファンドの名称変更等の対応、(2)グリーンボンド市場等における起債環境への影響、(3)トランジションファイナンスに関する基準の提示によるイメージ・信頼性の向上、が挙げられる。今後、ESMAがガイドラインを通じて、金融市場におけるグリーンウォッシングのリスクに効率的・効果的に対応し、社会・環境面の移行をどのように推進していくのか注目される。
西山 賢吾
要約
- 英国財務報告評議会(FRC)は2024年7月22日、2026年に予定されているスチュワードシップ・コードの改訂に先立ち、改訂において優先して検討する5つの項目と、2024年10月31日より先行して暫定的に改訂する5つの項目を公表した。
- これらの中で最も注目されるのがスチュワードシップ・コードの暫定先行改訂項目の一つである原則10「協働エンゲージメント」と原則11「エスカレーション」についての解釈の明確化である。ここでは、協働エンゲージメントやエスカレーションは「必要に応じて(where necessary)」実施するものであり、毎年実施する必要も、スチュワードシップの目的に適わないものに対して行う必要もないことが明確にされた。
- この解釈の明確化により、英国において機関投資家による協働エンゲージメント、エスカレーションが後退することを懸念する声もある。しかし、むしろ実績作りが主目的の、本質的ではない協働エンゲージメントやエスカレーションが減って、本質的で高質のものが相対的に増えることが期待される。協働エンゲージメント活性化のために大量保有報告における共同保有者の定義明確化を実施する日本にとっても、今回の改訂の帰趨が注目される。
- 協働エンゲージメントとエスカレーションの解釈明確化を含め、今回のスチュワードシップ・コード改訂の理由について、FRCは報告者の負担軽減を挙げている。この理由は2025年1月より実施されるコーポレートガバナンス・コード改訂時にも挙げられた。両コードにおける「高質の規律と開示拡充の要請」と「負担軽減」とのせめぎあいの中で、後者の意見が一段と優勢になる「潮流変化」と考えられるため、併せて注目したい。
関田 智也
要約
- 欧州において、トランジション・ファイナンスを活用する機運が高まっている。こうした中、英国のスタンダード・チャータード銀行(スタンチャート銀行)は、独自のフレームワークを策定し、トランジション・ファイナンスを推進している。
- スタンチャート銀行は、英国を本拠としつつ、収益の大部分をアジア・中東・アフリカにおける事業から得ている。これらの地域は、エネルギー移行を実現するために最も投資が必要とされている地域であるとともに、気候変動に伴う自然災害等からの被害を受けやすい地域でもある。こうした背景から、スタンチャート銀行がトランジション・ファイナンスを推進していることは、同行の顧客ニーズ及びリスク管理の観点から、理に適っていると言える。
- スタンチャート銀行は、トランジション・ファイナンスが脱炭素に向けて重要な役割を果たすとともに、収益の獲得も期待できる取り組みであることをアピールしている。同行は、トランジション・ファイナンスを巡る取り組みにおいて「公正な移行(Just Transition)」という考え方を発信しており、こうしたアプローチは機関投資家からも一定の支持を得ている。
- スタンチャート銀行は、英国に本拠を置きつつ、アジアを中心とするトランジション・ファイナンスへのニーズが非常に高い地域を事業基盤としている。こうした背景を鑑みると、同行は、トランジション・ファイナンスの意義を欧州の投資家に打ち出す必要があるという点において、日本の金融機関や政府と目的を共有しているとも言える。日欧の金融機関及び政府は、トランジション・ファイナンスの意義をステークホルダーに発信し、推進することについて、互いの取り組みを参考にできるのではないだろうか。
富永 健司
要約
- 国内の社債市場において、調達資金が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業に充当されるSDGs債は、発行の裾野が着実に広がっており、2023年度の発行額は約2.8兆円、社債の発行額全体に占めるSDGs債の割合は2割超に達した。
- 日本の社債市場におけるSDGs債は、2010年代後半に環境省の発行支援策の後押し等も背景に、グリーンボンドを中心に発行規模が拡大した。2020年代に入って、日本政府による重層的な支援を受けながら、トランジションボンドの発行実績が増えつつある。
- 社債市場においてSDGs債の発行拡大が進む中、(1)社債発行に占めるSDGs債の割合の上昇、(2)業種及び発行体の多様化、が進展している。中長期的な観点から、SDGs債による資金調達ニーズ、SDGs債の対象プロジェクトの広がり、一般社債対比の発行条件等を踏まえた、企業によるSDGs債の発行に向けたさらなる取り組みが注目される。
- 今後のSDGs債を含む社債市場を見据えると、国内外の金融政策、主要各国における選挙、地政学リスク等により、先行きを見通すのが困難な状況にあると言える。このような状況も踏まえた上で、SDGs債の市場発展に資する論点としては、(1)投資家層の拡大に向けた取り組み、(2)インパクトレポーティングの比較可能性の向上、が挙げられる。発行体がこれらの取り組みを進めることを通じて、日本のSDGs債市場全体がさらに活性化することが期待される。
関根 栄一、宋 良也
要約
- 中国では、2060年に二酸化炭素(CO2)の排出と吸収をプラスマイナスゼロにする「カーボンニュートラル」と、そのため2030年にCO2排出量をピークに到達させる「カーボンピークアウト」に向けたCO2排出削減の取り組みを「3060目標」と呼び、産業、環境、金融(分野)等の各政策を担当する政府当局が支援策を打ち出してきた。
- 2024年に入ると、7月の中国共産党・第20期中央委員会第3回全体会議(第20期3中全会)での改革プランにおいて、「3060目標」が再度確認され、グリーン分野に加え、「グリーン・トランジション」にも注力するという当局の姿勢が明確にされた。続いて8月、中国共産党・国務院(内閣)は「経済・社会の全面的なグリーン・トランジション加速に関する意見」を公表し、2030年と2035年までのトランジション目標を設定した。また、中国人民銀行を含む政府7部門は、先行して金融分野での移行支援に関する指導意見を公表している。
- 「3060目標」の実現に向け、金融分野の各業界はグリーン関連の取り組みに既に着手している。代表的事例として、中国人民銀行はカーボン排出削減支援ファシリティを設定しその利用期間を延長するとともに、石炭のクリーン・高効率の利用を支援するための金融機関向け再貸出枠を設けている。2021年に創設された全国統一の炭素排出権取引市場の整備継続や、地方政府によるトランジション・タクソノミーの制定といった取り組みも挙げられる。
- 今後、中国の「3060目標」の実現に向けて、2025年、2030年、2035年という鍵となる年の目標がどのように達成されるのかが注視される。加えて、世界で徐々に始まっている「グリーンエクイティ」に向けた中国での試みや、全国レベルのトランジション・タクソノミーの制定等の動きが、注目される。
塩島 晋
要約
- 中国では、2024年7月に3中全会が開催され、改革プランが採択された。その中で、2035年までに「美しい中国」の実現を目指すべく、グリーン・低炭素の発展の金融に関する言及、すなわちグリーンファイナンスのさらなる推進が示された。
- 中国のグリーンファイナンス市場は、2015年にグリーンファイナンス体系が構築されたことで、実質的な歴史の幕明けとなった。2016年にグリーンファイナンスに関する法整備が本格的に行われるようになった。そして、習近平国家主席が2020年9月、「3060ダブルカーボン目標」(二酸化炭素〔CO2〕排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までに実質排出量をゼロにする)を表明した。その後の取り組みも通じて、中国の発行体によるグリーンボンドの発行額は、国際基準に適合する分も増えていった。
- 中国による2023年のグリーンボンドの発行額について、国別内訳では2年連続で世界首位になったほか、資金使途別内訳では再生可能エネルギーがもっとも多くを占めている。
- 中国のグリーンファイナンス市場が今後も引き続き健全な発展をしていくための論点としては、(1)グリーンファイナンスも活用して脱炭素に関する目標を確実に達成していくこと、(2)信頼性向上に向けた取り組みの継続、が挙げられる。中国のグリーンファイナンスは、世界の金融資本市場で存在感を有しており、今後の動向が注目される。
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