特集1:職域ビジネスの新展開

成熟期に向かう米国職域DCプランのイノベーション
-資産取り崩しの不安をいかに解消するか-

野村 亜紀子

要約

  1. 米国の職域確定拠出型年金(DC)プランは、401(k)プランの登場から40年余りを経て、成熟期に入り始めたと言える。そのような中で、個人が退職後、元の勤務先の401(k)プラン口座から資産を取り崩していくという選択肢への注目度が高まっている。加入者、雇用主双方にとってのメリットが意識されるようになっている。
  2. 金融サービス業者は、ターゲット・デート型運用(TDF)に匹敵するようなイノベーションを、資産取り崩しソリューションにおいて起こせるかが問われている。TDFにアニュイティ(個人年金保険)を組み込む、よりシンプルに、定期的な払い出し機能やアニュイティ選択プラットフォームを提供するなど、様々な方法が模索されている。
  3. 資産運用会社大手の事例として、ブラックロック、アライアンス・バーンスタイン、ティー・ロウ・プライス、フィデリティの取り組みを概観すると、TDFによる自動化とアニュイティによる終身給付保証の組み合わせの利点・難点が見て取れる。また、ソリューション開発と実装において、金融サービス業者と顧客企業の協働の重要性が窺われる。
  4. 退職世代の資産取り崩しの不安解消は、日本において米国以上に重要な課題と言える。顧客企業との協働が可能という、職場経由の取り組みの利点は日本にも当てはまる。先行者である米国の試行錯誤を参照しつつ、日本の実情に合わせた解決策が求められる。