特集1:職域ビジネスの新展開
人的資本拡充と職場つみたてNISAの可能性
-従業員1万人アンケートに見る現状と課題-
野村 亜紀子
要約
- 企業の人的資本拡充策の一つとして、資産形成関連の福利厚生制度を提供し、従業員のファイナンシャル・ウェルネス向上を支援することが考えられる。従業員の生産性や帰属意識の向上、ひいては企業価値向上が期待される。
- 様々な資産形成関連の福利厚生制度があるが、新興勢力とも言えるのが職場つみたてNISAである。企業がNISA取扱業者と契約し、従業員は給与天引きでNISAを利用することができる。企業が奨励金を付与することも可能である。NISAが時限措置だった点が、福利厚生制度としての普及の障壁だったが、2023年の税制改正でNISAの恒久化が実現し、職場つみたてNISAは新局面を迎えている。
- 野村資産形成研究センターの「第3回ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)アンケート」(従業員1万人アンケート)を通じて、職場つみたてNISAの現状を確認したところ、利用者は、生産性、帰属意識が高く、ファイナンシャル・ウェルネスも高いといった傾向が見て取れた。他方、利用者のリスク・リターンに関する設問の正解率が全体平均よりも低いなど、金融知識面の課題も示唆された。
- 従業員1万人アンケートから、職場つみたてNISAを福利厚生制度のラインアップに追加することは企業の人的資本拡充策として有効なこと、その際、投資教育の提供を伴うのが重要であること等が示唆された。職場つみたてNISAが、確定拠出年金や従業員持株会と並び立つような存在になるのか、今後が注目される。