特集1:職域ビジネスの新展開
英ワークプレイスISAを巡る最新動向
-職場でのファイナンシャル・ウェルネス支援策-
中村 美江奈
要約
- 日本の少額投資非課税制度(NISA)のモデルとなった英国の個人貯蓄口座(ISA)は、1999年の制度開始から20年以上経過し、英国民の資産形成で中心的な役割を果たしている。その中で、福利厚生制度の一環として「ワークプレイスISA」を提供する企業もある。
- ワークプレイスISAは、法制度として規定されているわけではなく、税制や非課税枠は一般のISAと変わらない一方で、給与天引きでの拠出が可能となる他、口座管理料や投資商品の取引手数料が割引になる等の特徴を有する。雇用主は、福利厚生パッケージの拡充による人材の獲得や雇用の維持等が期待できる。従業員側も、雇用主が選定した信頼できるプロバイダーを通じて給与天引きで貯蓄できるという手軽さ等がメリットとして挙げられる。
- ワークプレイスISA市場は、ISA市場全体に比して小さいものの、直近では、厳しいインフレ環境下において従業員のファイナンシャル・ウェルネス向上を企図した企業による導入もあり、拡大基調にある。
- 日本においても、福利厚生制度として雇用主がNISAを提供する「職場つみたてNISA」がある。給与天引きによる拠出に加え、雇用主から補助金を付与することもできる。昨今、多くの日本企業は人的資本を重視する経営に取り組んでおり、その中で従業員のファイナンシャル・ウェルネス支援は重要な役割を占めている。自社の人材投資を充実させ、ステークホルダーにアピールする取り組みの一環として、「職場つみたてNISA」の提供は有用な選択肢となり得よう。