特集2:新展開を目指す中国資本市場

新たな展開を迎える中国の公募型インフラREIT
-試験運用から恒常的な発行へ-

宋 良也

要約

  1. 中国の国家発展改革委員会(発改委)・投資司は2024年7月26日に、「公募型インフラREITプロジェクトの恒常化発行を全面的に推進することに関する通知」(以降、1014号通知)を公布した。これにより、中国における公募型インフラREITの3年間の試験運用は終わり、恒常的な発行の段階へ移行することとなった。
  2. 3年間の試験運用を経て、中国における公募型インフラREIT市場は順調に成長してきた。試験運用期間中、地方国有企業は保有する大規模なインフラを裏付けに、公募型インフラREITを活用して資金調達を行ってきた。一方で、公募型インフラREITは、(1)原資産となる対象施設の種類が不十分であること、(2)上場要件が厳しい、(3)審査期間が長いなど上場審査プロセスが冗長、といった課題を抱えている。
  3. 今般の1014号通知では、これらの課題を解決するためのプロジェクトの申請要件に関する改正を打ち出している。具体的には、(1)ホテル・オフィスビルを条件付きでREITの原資産として容認、(2)市場メカニズムを重視した上場要件の緩和、(3)複雑な審査プロセスの簡素化、等が挙げられる。
  4. 今後は、中国における公募型インフラREIT市場において、上海(深圳)・香港ストックコネクトの投資対象としてREITが容認されたことにより、海外投資家の拡充が見込まれる。また、石炭火力発電の規模が大きい中国のグリーン・トランジションにおいて、如何に公募型インフラREITが活用されていくのか、注目される。