特集3:芸術と金融
日本の工芸「KOGEI」を世界に
-発見される日本から売り込む日本へ-
竹下 智
要約
- 日本の伝統工芸産業には、需要の減少、後継者不足、原材料・用具不足といった課題があり、生産額や従業員数の減少が続いている。これらの課題を克服するために、海外市場での需要開拓策を実施すべきである。
- 欧州で実施された調査によると、工芸品の需要拡大に向けた施策として、工芸品に関するストーリーの積極的な伝達、実物に触れる機会の提供、関連産業との連携による波及効果の拡大、国外市場の開拓、後継者育成のための仕組みの整備、等があげられている。
- 日本の工芸品の海外需要開拓においても、客観的データに基づいた現地市場の状況を十分にリサーチした上でのマーケティング戦略、ストーリーを絡めたブランディング、実店舗を含む流通網・販売チャネルの整備、後継者の育成、が重要となる。
- 上記の施策を実施するためには、資金調達も重要な課題であり、公的資金と民間の投資・融資を組み合わせたブレンデッド・ファイナンスの活用が効果的な手段となりうる。さらに、地域社会や文化に貢献することで、民間からの投資がインパクト投資でもあることをアピールすることも出来よう。
- 日本文化の美意識と精神性を象徴する「KOGEI」の可能性の追求は、日本の工芸のブランド価値向上につながるとともに、地元 の観光資源の創出を含む地域活性化に寄与することが期待される。