金融・証券規制

銀行勘定の金利リスク(IRRBB)における金利ショックの改定
-バーゼル委員会による定期的なレビュー-

小立 敬

要約

  1. バーゼル委員会は2024年7月16日、銀行勘定の金利リスク(IRRBB)の計測において金利ショック・シナリオを生成する際に、インプットとして必要な各通貨に係る金利ショックを改定する最終文書を公表した。本件については、バーゼル委員会が2023年12月に市中協議文書を公表しており、今般の最終文書は市中協議プロセスを経て最終化されたものである。
  2. 市中協議文書は、時系列データを2022年末まで拡張して金利ショックの水準を再調整することに加えて、金利ショックを決定する際の計測手法を見直すことを提案していた。今般の最終文書では、市中協議文書が提案した計測手法の改定についてはそのまま採用されているが、(1)時系列データを2023年末まで延長し、(2)金利ショックの数値を50ベーシスポイント(bp)から25bpの単位で丸めるよう変更したことから、金利ショックの大きさは市中協議文書が提案したものとは一部異なるものとなっている。
  3. 米ドルやユーロ、英ポンド、スイスフランを含む一部の通貨では金利ショックの水準が引き上げられることから、計測される一部通貨のIRRBBの水準に影響が生じることが考えられるが、円金利については現行の水準から変更はなく、日本の金融機関が計測するIRRBBの通貨合計値には大きな影響は生じないものとみられる。
  4. なお、2023年3月の銀行危機の背景の1つに、金利リスク管理の失敗が指摘されており、バーゼル委員会が現行のIRRBBの枠組みに関して見直しを行うのかどうかについても今後注視していく必要があるだろう。