金融機関経営

世界最大の資産運用会社ブラックロックの経営戦略

岡田 功太

要約

  1. 世界最大の資産運用会社となったブラックロックのビジネスは、主力の資産運用事業に加え、テクノロジー・サービス事業、資産評価事業から成る。元々は年金基金等から主に債券アクティブ・ファンドの運用を受託するブティック運用会社であったが、(1)上場投資信託(ETF)を含む株式ファンドやオルタナティブ・ファンド事業を展開する資産運用会社等を買収、(2)金融機関及び政府系ファンドとの提携を通じて、インハウス運用の拡張・強化を図っている。
  2. その上で、ブラックロックは、アラディンというブランド名でテクノロジー・サービス事業を運営している。買収や提携を通じて、アラディンの機能拡充に取り組み、資産運用業とテクノロジー・サービス事業間のシナジーを生み出し、今や大規模銀行グループに匹敵する存在になっている。
  3. 他方で、日本の大手資産運用会社は、(1)ファンドの販売促進・企画立案業務、(2)外部の資産運用会社のファンドの精査・選定業務 、(3)ミドル・バックオフィス業務など、運用以外の業務にリソースを配分・強化している。こうした既存の強みを活用し、他の資産運用会社やアセットオーナー等から運用以外の業務のアウトソースを請け負うことを目的としたビジネス(資産運用支援プラットフォーム事業)の展開を検討してもよいのではないだろうか。
  4. 加えて、日本の資産運用会社は、インハウス運用の拡張・強化にリソースを配分することも必要であろう。外部委託運用ファンドの運用資産総額の増加は、営業収益だけではなく、委託調査費の増加にも寄与するため、営業利益の増加に繋がりにくい。運用力の向上及び収益構造上の課題解決の観点から、運用対象資産・運用戦略の多様化や運用人材の獲得を目的とした資産運用会社の買収等に取り組むことも、選択肢の一つではないだろうか。