アセットマネジメント
2024年公的年金財政検証の注目点
野村 亜紀子
要約
- 5年に1度実施される公的年金財政検証の結果が、2024年7月3日に公表された。財政検証では、人口動態及び経済状況に関する一定の前提の下で、長期の財政収支を計算し、給付抑制措置であるマクロ経済スライドにより財政均衡に到達する年度、及びその際の所得代替率を確認する。
- 今回は、(1)高成長実現、(2)成長型経済への移行・継続、(3)過去30年投影、(4)1人当たりゼロ成長という4つの経済シナリオの下で検証が行われ、(1)~(3)のケースでは財政が均衡し所得代替率が50%を上回るとされた。また、厚生年金の適用拡大、国民年金の加入期間延長といった制度変更を行った場合の効果について、オプション試算も実施された。
- 財政検証結果から、公的年金の持続可能性は経済成長次第であることが改めて確認された。今後、年末にかけて制度改正が議論され、2025年に必要な法令改正が行われる見込みだが、国民年金の低年金化対策が一つの焦点になると見られる。また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)及び公務員年金等の基本ポートフォリオの見直しも実施されるが、岸田政権の資産運用立国の施策の下、公的アセットオーナーの運用高度化に関連した政策的な要請が、どのように取り込まれていくものかも注目点となろう。
- 私的年金改革の議論を、公的年金の持続可能性向上と併せて本格化させることも重要である。6月21日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」及び「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」に、確定拠出年金の改革事項が盛り込まれている。団塊ジュニア世代が50代に入ることを踏まえ、大胆な改革の推進が期待される。