財政・地方債

中国における地方債務問題

塩島 晋

要約

  1. 近年、中国の地方債務問題が深刻化している。背景としては、不動産市場の不調や、ゼロコロナ政策による費用負担の増加等が挙げられる。
  2. 不動産市場の低迷を受けて、地方政府の土地使用権売却収入の減少が生じている。減少した歳入を充当するべく地方政府専項債の発行が増加しており、地方財政を一層圧迫している。
  3. こうした債務問題に加えて、地方政府の予算会計上オフバランスとなる地方融資平台の隠れ債務問題も深刻化している。中央政府は、特殊再融資債(置換債)の発行等を通じた隠れ債務の解消を図っている。
  4. 今後、個別地方政府の財政危機や債務不履行(デフォルト)はあり得るが、中央政府による救済が期待されるため、システミックな金融リスクに発展する可能性は低い。中央政府による財政政策等にも注目する必要があろう。